答えてくれる人
医学博士
藤田紘一郎先生
1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数
「粗食=健康」はほんとうか?
百寿者の食事を見ると……
みなさんは健康のために、なにか気をつけていることはありますか? もし「肉を控えている」という方がいたら、その習慣は今日からすぐにやめてください。じつは中高年、とくに50歳以上の人にとって肉は重要な栄養源。なぜ50歳なのか? まずはその理由からお話ししましょう。
わたしたちのからだは50歳を過ぎると「子づくりモード」から「長生きモード」へと切りかわります。生殖機能の減退とともに体内の老化スピードが加速しますが、そこで肉の動物性タンパク質が大活躍。血管や筋肉、そして大切な腸など全身の細胞を丈夫にし、老化を防いでくれるのです。
さらに、肉には豆腐や魚では補えない重要な栄養素があります。それがコレステロール。「悪玉」と不名誉な名前をつけられているものもありますが、コレステロールが動脈硬化の要因となるのは、活性酸素の攻撃を受けたときだけ。
悪玉も善玉も適度な量がないとからだの機能を維持できず、不足すると認知症の恐れも。実際、100人の百寿者の食生活を調査したデータでは、全員が肉をよく食べ、コレステロール値も少々高めだったのです。
悪玉菌を善玉化させて
肉と上手につき合おう
なかには「今日から肉を食べよう!」と意気ごんでいる方がいるかもしれませんが、もうすこしおつき合いください。ぜひ「正しい肉の食べ方」を知ってほしいのです。
わたしのおすすめの食べ方はずばり、ステーキ。よく噛むので意外にもカロリーを消費し、からだに脂肪がつきにくくなるから。さらに大きな肉を食べると人間の野生性をよび覚まし、不思議とパワーがわいてくる。野菜炒めなどで細かな肉を食べるよりも元気が出ますよ。肉の種類は牛、豚、鶏、どれでもかまいませんが、ヒレやロースなど脂肪のすくない部位を選びましょう。
ステーキを食べる際には、いくつか注意点があります。まずは食べる頻度。腸内に棲む悪玉菌は肉の脂が大好物なので、毎日食べると悪玉菌だらけになり免疫力低下の原因に。腸を汚さずに肉の栄養をいただくには、週2回がベストです。
次に、野菜やキノコを先に食べておくのも重要なポイント。じつは悪玉菌は食物繊維をエサにすると「善玉化」し、病原菌の退治やビタミンの合成など、からだにとって有益な仕事をしてくれるようになるのです。
最後に、「おいしい」と楽しんで食べてください。肉を食べることに罪悪感を抱くと腸もストレスを感じ、はたらきが弱まってしまいます。幸せを感じながら食べれば腸も元気になり、栄養をしっかり吸収してくれますよ。
腸もごきげん!
正しい肉の食べ方
先に食物繊維をとる
野菜やキノコなどを先に腸に送っておけば、肉を食べても悪玉菌が大繁殖しない。野菜の量は肉の2倍が目安
オリーブオイル+ニンニクで焼く
肉を焼くときは抗酸化作用の高いオリーブオイルやニンニクで。動脈硬化の原因「活性酸素」の攻撃を抑制できる
白米をいっしょに食べない
糖質とタンパク質が体内で結びつくと老化物質が発生。主食は白米や小麦のパンを避け、繊維質の多い玄米や五穀米、ライ麦パンを選ぼう
肉は食べ方さえきちんと守れば「若返り食材」となることがわかりました。「ステーキはちょっと……」という方は、鍋やしゃぶしゃぶなどさっぱりとしたメニューでも。上手に肉を食べ、健康長寿を目指しましょう!