週1回の「デジタル断ち」が腸のサビを落とす

答えてくれる人

医学博士

藤田紘一郎先生

1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数

便利になった世の中
からだにとってはストレス!?

最近、小さな子どもが携帯電話を持っているのをよく見かけます。わたしが子どものころは家に固定電話すらなかったのに、1人1台持つようになるとはすごい時代になったものです。

ほかにもテレビや電子レンジ、冷暖房……いまやわたしたちの生活は電化製品なしでは成り立ちません。しかしこの便利で快適な生活が、からだにとって大きなストレスになっているのをご存じでしょうか。

その原因は、電化製品などから発せられる「電磁波」です。生物にとって異物である電磁波を浴びると、体内に敵が侵入してきたと免疫機能が勘違いして攻撃をはじめます。その際にからだをサビつかせる「活性酸素」が発生してしまうのです。

本来であれば、腸内細菌が抗酸化物質をつくり、活性酸素をやっつけてくれます。しかし、現代の電気使用量は50年前のなんと10倍。屋外でもセキュリティシステムやICカードの利用などにより、そこらじゅうに電磁波が飛び交っています。これでは次から次へと体内に活性酸素が発生し、抗酸化物質の生成が追いつきません。

そうして活性酸素が蓄積された結果、腸内細菌は減少。腸がサビついてしまうのです。

電化製品と上手につき合い、
腸をピカピカに保とう

からだの門番である腸がサビつけば、体内にはさらに活性酸素が充満します。すると血管や骨、脳など全身の細胞をサビつかせ、動脈硬化や骨粗鬆症、認知症などあらゆる病気のリスクが上昇。ほかにもアレルギーや関節リウマチといった疾患の原因にもなってしまいます。

だからといって電気のない生活などできないと思った方、ご安心ください。電化製品のつかい方をすこし工夫するだけで、活性酸素の発生量を抑えることができるのです。

ポイントは「距離」と「時間」。たとえば、電子レンジ使用時は最低1m離れる、携帯電話は服のポケットではなくカバンに入れるなど、電化製品とからだの距離を遠くに保つほど電磁波の影響は小さくなります。また、からだの近くで使用するものは使用時間をみじかくする工夫を。たとえばドライヤーなら、タオルで髪の水分を拭きとってからつかうといいですね。

電化製品の大きさや種類によって電磁波の強さは異なる。これ以外でも、たとえば機器の大きさが30㎝であれば最低限それ以上の距離を保ちたい
出典:古庄弘枝著『見えない汚染「電磁波」から身を守る』講談社(2010)より作成

さらに、わたしが実践しているのが「デジタル断ち」。休日になるとテレビもパソコンも見ずに、緑の多い公園を散歩します。ときには動物園に出かけてひたすらかわいい動物を眺めることも(笑)。実際に電化製品と離れて過ごしてみると、心身がスッキリするのがわかるはず。週1回だけでもじゅうぶんです。腸のサビも落ちてピカピカになり、腸内細菌も元気にはたらきますよ。

今日から実践!
からだのサビを落とす方法

自然の中に身を置く

樹木から発せられる香り成分には抗酸化作用がある。深く息を吸って香りを楽しめば、腸もリラックスする

枕元に携帯電話を置かない

就寝中は活性酸素を除去するホルモン「メラトニン」がつくられる。電磁波はホルモン分泌に悪影響を与えるため、枕元に電化製品を置かないようにしよう

色の濃い野菜を食べる

ピーマンやニンジンなど色の濃い野菜には抗酸化物質が豊富。こびりついた腸のサビもきれいに落としてくれる

いままで「サビつき」を意識して電化製品をつかっていた方はすくないでしょう。しかしフランスやイギリスでは、携帯電話の過度な使用を控えるよう政府が勧告するなどの対策が進んでいるようです。目には見えない電磁波から腸を守るために、できることから実践していきましょう。

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2024/04/26 17:50:23