老化物質を溜めたくなければ腸の免疫力を高めなさい

答えてくれる人

医学博士

藤田紘一郎先生

1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数

じわじわと若さを奪う
「スローミイラ現象」とは?

歳をとるといつの間にか現れるシワや白髪。若いころにはなかったのに、いったいどういうメカニズムで発生するのか、不思議ですよね。

じつは最近、老化の原因物質がついに発見されました。それは、「AGE(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)」です。この悪性の老化物質がからだの至るところに悪さをしていたのです。

AGEが体内に溜まる過程はふたつ。ひとつ目は、食品などから直接体内にとりこんでしまうケースです。AGEは糖とタンパク質が加熱されてできる物質のため、トーストや揚げ物、クッキーなどこんがりと焼き色のついた食品に多く含まれます。

ふたつ目は、血糖値の上昇です。代謝しきれない余分な糖が体内のタンパク質とくっつき、体温で熱せられてAGEに変化。たとえば、砂糖を熱するとベタベタとあめ状になりますよね。それと同じようにベッタリと皮膚や頭皮の組織に付着して細胞を壊し、肌のシワやたるみ、薄毛などの老化現象を引き起こすのです。

このように、からだをじわじわとミイラのようにさせることから、「スローミイラ現象」とよばれています。

腸の免疫力が老化を防ぐ。マクロファージはほかにもウイルスや細胞の死骸も食べるいわゆる「そうじ屋」だ

若返りのカギは
腸の免疫細胞が握っていた

AGEは見た目を老化させるだけではありません。骨や血管、神経系にも悪影響をおよぼし、骨粗しょう症、動脈硬化、アルツハイマー病、網膜症といった病気までも招きます。からだの内側もボロボロに老化させるなんて、想像するだけでも恐ろしいですよね。

驚かせてしまいましたが、ご安心ください。そんなスローミイラ現象からからだを守ってくれるのが、ほかでもない腸なのです。

ここで活躍するのは、「マクロファージ」という細胞。彼らは以前お話ししたNK細胞と同じように、腸でつくられる免疫細胞。24時間休まずに病原体と戦ってくれています。マクロファージはAGEを見つけると腸から出動。アメーバのような動きをしてとり囲み、食べつくしてくれるのです。

ただし、AGEは一度体内に蓄積されると排出されにくくなるやっかいなもの。恐ろしい老化物質を体内に溜めないためにも、常に腸の免疫力を高めることが大切です。食物繊維や発酵食品を毎日とる、よく笑うなど、腸の免疫力を上げつづけることが、老化防止につながるというわけです。

腸の免疫力が高ければ、老化も病気も防ぐことができる。しかも近年の研究でわかったことですが、腸内細菌がある「若返り物質」まで生成してくれるというのです。それについては次回、くわしくお話しすることにしましょう。

AGEを発生させるものはコレだ!

AGEが含まれるもの

• トースト
• 揚げ物
• 焼き魚などのコゲ
• 焼き菓子
• タバコ
など

血糖値を急上昇させる食品

• 砂糖たっぷりのお菓子やジュース
• 白米
• 麺類
など

大量のAGEの排出作業で免疫細胞が疲弊しては元も子もない。日ごろからこれらの摂取を控え、腸の負担を軽くしてあげよう

肌のシワにはクリーム、薄毛には育毛剤と老化対策はさまざま。しかし今回、老化の原因物質は腸がやっつけてくれることがわかりました。若々しいからだを保つために、まずは腸を大切にすることを意識しましょう。

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2024/04/27 16:48:20