土とふれあって日和見菌を増やしなさい

答えてくれる人

医学博士

藤田紘一郎先生

1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数

善玉菌と悪玉菌は
たった3割の少数派

みなさん、「腸活」という言葉をご存じですか?これは健康な腸を手に入れようという習慣のこと。そのためには、なにをすればいいか。まずは「善玉菌をとろう」と考える人が多いのではないでしょうか。

これまで世間では、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌ばかりがもてはやされてきました。しかし、腸内細菌のうち善玉菌と悪玉菌は両方合わせてもほんの3割程度。今回は残りの7割、「日和見菌」の話をしましょう。

日和見菌はその名のとおり、どっちつかずで優勢な方に味方する、ちょっとずる賢い性格をしています。善玉菌が優勢なときは善玉菌に味方して腸によいはたらきをしますが、悪玉菌が多くなると一変。有害な毒素を発生し、細胞のがん化や老化の促進、さらには脳卒中や心筋梗塞などさまざまな病気まで引き起こしてしまいます。

ただし、悪玉菌も人間には欠かせない菌ですから、完全に排除することはできません。増え過ぎると悪さをはじめるので、善玉菌を優位にしつつ、日和見菌を増やすことがポイント。

彼らが善玉・悪玉のどちらに味方するか。それ次第で腸内バランスがガラリとかわってしまうのです。

食物繊維や酵素たっぷりの和食をとれば善玉菌も大よろこび。反対に揚げ物など高脂肪な食事は悪玉菌を増殖させる。腸の声に耳を傾け、日和見菌を味方につけよう

農家の子どもに
アトピーがすくない理由

日和見菌の大半は土壌菌といって、土の中や空気中などわたしたちの身近にいる細菌たち。彼らの一部がからだに入り、腸に棲みつくのです。

農家で育った子どもには、アトピーや喘息がすくないといわれています。これは土にふれることが多いので、さまざまな土壌菌をとり入れるチャンスがあるから。それが腸内で日和見菌になり、免疫力の向上に一役買っているのでしょう。

また、腸内細菌の種類は3歳までに決まります。赤ちゃんはいろんなものを口に入れなめますが、あの行動はじつは、からだの中に細菌をとり入れ、免疫力を高める重要な任務。ですから無理にやめさせず、温かく見守ることがその子の、そして腸のためになります。

では、どうしたら日和見菌を増やせるのか。いちばん手軽で有名なのは納豆を食べること。納豆菌は土壌菌のひとつで、腸に入ると自分の仲間の菌を増やしてくれます。

納豆は毎日食べているよ、という方。最近土にふれたのはいつでしょうか。新型コロナウイルスの影響で、ベランダ菜園やガーデニングが人気だそうですね。これは自粛というストレス下で腸が求めた本能なのかもしれません。

土いじりは腸も心も元気にしてくれます。せっかくやるなら、ご家族やご友人も巻きこんでわいわい楽しみましょう。お天道さまの下で土にふれていると、腸からもうれしそうな笑い声が聞こえてきそうですね。

今日から実践!
日和見菌を増やそう

納豆+ネバネバ食材

ヤマイモ、なめこ、メカブなどのネバネバ食材は水溶性食物繊維が豊富で納豆と混ぜれば最強コンビ! 飽きずに食べられ、腸もよろこぶ

土とふれあう

家庭菜園やガーデニングは、カブやホウレンソウなどがおすすめ。楽しく土壌菌とふれあえてストレスも発散できる

わたしたちのからだに棲むあらゆる菌は健康を守ってくれる大事な「友」だと藤田先生は言います。日和見菌とも仲よく共生していきたいですね。

single.php

2024/03/29 10:03:36