免疫力を高めたければストレスを溜めるのはやめなさい

答えてくれる人

医学博士

藤田紘一郎先生

1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数

厳しい制限は逆効果!?
とある調査が導いた結果とは

みなさんがストレスを感じるのはどんなときですか?

もっとも強い要因は配偶者との死別だといわれていますが、家族や自分の病気、人間関係の悩みから天候や騒音が気になるといった環境的な問題まで、挙げればキリがありませんね。

ストレスを受けると悪玉菌の病原性が高まり、腸内細菌のバランスが乱れることがわかっています。さらに、がん細胞やウイルスをやっつけてくれるNK(ナチュラルキラー)細胞の活性が下がり免疫力も低下。その結果引き起こされるのが、うつやアレルギー、がんなどといった病気の数々です。

(上)精神的なストレスを受けるとNK細胞活性は数分で低下
(下)30分間目を閉じてきれいなサンゴ礁を想像するだけでNK細胞活性が上昇。プラスのイメージが免疫力に与える影響がわかる 
出典:藤田紘一郎著『免疫力をアップする科学新装版』SBクリエイティブ(2018)より作成

前述したストレス要因は自分の意志で避けがたいものばかりですが、そのいっぽうでみずからストレスを生みだすことはありませんか? たとえば、健康のためにとやりがちな過度な食事制限、激しい運動などです。

「フィンランド症候群」という言葉があります。フィンランドで実施されたある調査で40~50代の男性1200人を対象に、健康指導を受けるグループとなんの制限もしないグループに分け、健康状態を10年間追跡しました。すると、予想に反して前者の死亡率が高いという結果になったのです。

ガマンし過ぎず
嗜好品ともうまくつき合おう

この結果についての解釈は諸説ありますが、わたしは「健康を管理しなければいけない」という意識が心身にストレスを与えたことが影響していると考えています。制限なく気楽に暮らしていた人の方がストレスがすくなく、NK細胞活性を高く保てたのでしょう。

「からだに悪い」とあれもこれも制限しては精神的に参ってしまいますね。そこで今回は、制限しがちなお酒と甘いおやつとのつき合い方をお教えしましょう。

まずはお酒。人は遺伝子によってお酒に強いNN型、飲めるが強くないND型、まったく飲めないDD型の3つに分類されます。なかでもNN型でお酒好きな人が飲まなくなると、それがストレスになってしまいがち。気の合う友人と、あるいは読書をしながらひとりでゆっくりと、リラックスしながら適量を飲むことが大切です。

そして甘いおやつ。市販のお菓子につかわれる精製された白砂糖や小麦粉は腸の吸収がはやく、血糖値を急上昇させるので要注意。おすすめしたいのは、善玉菌の代表格・ビフィズス菌が大好物とするオリゴ糖です。1~2週間摂取すると腸内のビフィズス菌が大幅に増えたというデータもあります。オリゴ糖が豊富に含まれるのはタマネギ、ゴボウ、バナナ、ハチミツなど。ヨーグルトにバナナとハチミツをくわえれば、腸が大よろこびするおやつになりますね。

健康的な生活にとらわれてストレスを溜めては本末転倒。からだのための習慣は、肩の力を抜いて楽しみながらつづけましょう。

今日から実践!
嗜好品とのつき合い方

酒量の上限を知る

NN型の1日の上限は、日本酒なら2合、ビールなら瓶2本程度(ND型は半分量)。焼酎(上限水割り2杯)なら余計な糖質がなく血糖値も上がりにくい

腸がよろこぶおやつを

焼いてオリゴ糖が増えた焼きバナナなら食物繊維もとれて一石二鳥。白砂糖や小麦粉をつかったお菓子は月1~2回程度のお楽しみにしよう

藤田先生のモットーは「気の合わない人と食事をしない」ことだそう。ストレスを抱えこまず、腸が元気になる生活を心がけて免疫力をアップさせたいですね。

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2024/04/18 22:08:36