答えてくれる人
医学博士
藤田紘一郎先生
1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数
老化も病気も予防する
夢のような物質を発見!
これまで「腸が元気だとからだが若返る」とくりかえしお伝えしてきましたが、じつは新たな事実が明らかになってきました。なんと腸が、ある若返り物質をつくっていたのです。その驚くべき効果にいま注目が集まっています。
その物質は、「エクオール」とよばれるもの。これは大豆食品に含まれるイソフラボンという成分が変化した物質で、食べ物から摂取したイソフラボンを腸内の善玉菌がエクオールに変換してくれるのです。
エクオールはコラーゲンの生成をうながし、肌や髪にハリツヤを与えてくれます。ある実験で人工的にエクオールを腸内に増やしたところ、目尻のシワが薄くなったという報告があります。
それだけではありません。血管や骨をしなやかに保ち、動脈硬化や糖尿病、骨粗しょう症などを予防する効果も。近年の研究では、抗がん作用があることも判明しています。まだ研究段階の物質ですから、未知の健康効果がたくさんあると考えられています。
そんな夢のような物質を腸内細菌がつくりだしてくれるなんて、感激ですよね。わたしたちの腸内細菌はじつに働き者です。
多様な善玉菌をとり入れて
「エクオール産生菌」を増やそう
ある興味深い実験があります。骨密度が減少しやすい閉経直後の女性をふたつのグループに分け、片方だけ毎日豆乳を飲み、イソフラボンを摂取しつづけてもらいました。そして2年後に骨密度の変化率を測定したところ、なにもしなかったグループは4%低下したのに対し、イソフラボンをとったグループは上昇。なかでも大きく上昇したのは、イソフラボンと相性のよい善玉菌(エクオール産生菌)を多く持つ人だったのです。
つまり、腸内にどれくらいエクオール産生菌を持っているかが、若返りのカギを握っているのです。
残念ながら自分がどれくらい持っているかを調べるのはむずかしいですが、産生菌を増やすコツをお教えしますので、ぜひ実践してみてください。
それは、味噌や納豆、漬物などさまざまな発酵食品をとり、腸内の善玉菌の種類を増やすこと。そして、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖も欠かせません。善玉菌にも個性がありそれぞれ必要な栄養源は異なりますから、バラエティに富んだ食べ物を腸に送りこむことが大切です。
もちろん、エクオールの材料となるイソフラボンの摂取も忘れずに。豆乳や豆腐などの大豆食品も意識してとりましょう。
腸がよろこぶ食生活を送るだけで、若々しく健康なからだが手に入る。かんたんで確実な若返り法なのです。
エクオール産生菌を増やす
食ベ物はコレだ!
発酵食品
• 納豆
• 漬物
• 味噌
• キムチ
など
食物繊維
• ゴボウ
• メカブ
• シイタケ
• 玄米
など
オリゴ糖
• タマネギ
• キャベツ
• バナナ
• ハチミツ
など
偏った食品だけでは特定の菌しか増えない可能性も。日がわりで食べるものをかえるなどして、エクオール産生菌を増やそう
若返りに必要なのは、どれも身近な食べ物ですね。かんたんにとり入れるなら、味噌汁がおすすめ。巻頭の特集でも味噌の話がありましたが、善玉菌もイソフラボンもとれて一石二鳥です。野菜や豆腐など、具だくさんにしていただきましょう。