答えてくれる人
医学博士
藤田紘一郎先生
1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数
近い将来、
便で病気を治す時代に?
世の中には少食なのに太る人と、たくさん食べてもスリムな人がいます。同じ人間なのになにが違うのか、みなさんも疑問に思ったことはありませんか?
じつは最近、その答えが明らかになってきました。それは、腸内にいる「ヤセ菌」と「おデブ菌」のバランスの違い。これらは日和見菌に分類される菌で、誰もが腸の中に持っています。
「おデブ菌」はその名のとおり、食べたものを脂肪として溜めこむ菌。少食なのに太りやすい人の腸はおデブ菌が多いのです。
いっぽう「ヤセ菌」は脂肪のとりこみを抑え、太りにくい体質をつくります。さらに胃や腸、肝臓などを活発にする「短鎖脂肪酸」を生産し、さまざまな病気を予防してくれるのです。ならば、ぜひともヤセ菌を増やしたい、と思う方が多いでしょう。
近年そのはたらきを利用し、ヤセ菌が多い人の便を患者の腸に移植するという驚きの治療法が話題です。潰瘍性大腸炎の改善が確認されており、動脈硬化や認知症などの予防も期待されています。
しかし、これはまだ研究段階の治療法。誰でも手軽にヤセ菌を増やせる方法をお教えしますので、ご安心ください。
ヤセ菌がよろこぶ
3つの栄養素をとろう
「ヤセ菌」は善玉菌が優勢のときに活性化する日和見菌です。ということは、善玉菌を増やす生活を送ればヤセ菌もおのずと増えるのです。読者のみなさんは、すでに食物繊維や酵素を日常的にとり、日々努力されているでしょう。ぜひともその習慣をつづけてください。
さらに食物繊維は消化されずに腸まで届き、ヤセ菌のエサになります。また、オリゴ糖にも同様の効果があり、タマネギ、ゴボウ、バナナ、リンゴといった身近な食材に多く含まれます。食物繊維、酵素が豊富な発酵食品、オリゴ糖。この3つの栄養素を積極的にとれば、ヤセ菌が多い腸になるでしょう。
反対に、おデブ菌は高カロリー・低食物繊維の食事が大好物。じっさい、ピザやパスタが主食のイタリア人はおデブ菌が多く、野菜や豆をよく食べるアフリカ圏の人はヤセ菌が多いという興味深い研究結果があります。おデブ菌が多いと糖尿病や高血圧になりやすいだけでなく、がん細胞を増殖させるともいわれています。
大切なのは「どれだけ食べるか」ではなく、「なにを食べるか」。さっそく今日からおデブ菌を減らし、ヤセ菌を増やす食生活をはじめましょう。そうすれば、スリムで病気知らずのからだが手に入るのです。
今日からできる!
「ヤセ菌」を増やす方法
食物繊維をとる
根菜や海藻、豆類にはヤセ菌のエサとなる食物繊維が豊富。よく噛んで食べれば、スムーズに腸まで届く
間食にはくだものを
バナナやリンゴに含まれるオリゴ糖はヤセ菌の大好物。白砂糖たっぷりのお菓子はおデブ菌を増やしてしまうので控えて
息をゆっくり吐く
腸の動きが悪いと、ヤセ菌がじゅうぶんにエサを得られない。吸うときの2倍かけてゆっくり息を吐けば、腸が刺激されてヤセ菌も活発に
「ダイエットのため」と食事制限をすると、一時的に体重は減ります。しかし、腸のはたらきが衰えてむしろおデブ菌が増えてしまうそう。ヤセ菌がよろこぶ食事をとること、それが太りにくいからだをつくる秘訣と心得ましょう。