答えてくれる人
医学博士
藤田紘一郎先生
1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数
さまざまな健康法が現れては消えていく現代で世間に定着してきたのが「腸を健康にする」という考え方。今回は腸内研究の第一人者である、藤田紘一郎先生にお話を伺った。
現代人の体内は毒素だらけ
藤田先生は以前から、書籍や講演などで「腸を健康にすれば病気にならない」と主張されてきました。その中には「野草だより」のテーマとも通じる点があるように感じています。
昔はよく「変わり者」よばわりされ、あちこちで笑われたものですが(笑)。理解を示してくださる方が増えたのはうれしいものですね。ようやく最近になって、西洋医学でも「腸」が重要視されるようになりました。
そもそも、藤田先生が「腸」に注目されたきっかけは何だったのでしょうか?
あれは50年ほど前、インドネシアを訪れたときのこと。現地の子どもたちが、驚くほど汚れた川で泥んこになって遊んでいる姿を目にしました。大腸菌などの雑多な菌がウヨウヨいるはずなのに、不思議なことに子どもたちは誰もが元気いっぱい。これは腸内細菌にヒミツがあるのでは……と考えるようになったのです。
花粉症やアトピーに悩む現代の日本の子どもたちとは対照的ですね。日本人の便の量が減ったという著書内のご記述もたいへん興味深いです。
戦後間もないころ、日本人の便は1日あたり350~400gほどありました。ところが食生活の欧米化によって、食物繊維の摂取量は激減。その結果、便の量もおよそ半分の150~200gまで減ってしまったのです。
便の量がすくないと問題があるのでしょうか?
じつは便のおよそ半分を腸内細菌とその死がいが占めています。便が減ったということは、腸内細菌の数も減ったということ。腸内細菌には免疫力を高めるなど重要な役割がありますから、極めて深刻な問題です。
驚きました。免疫力が低下すると、病気になってしまいますね。しかも、食べものが増えて食べる量も増えたのに、出てくる量はすくない。ということは食べかすは……。
そう、腸の中に残っているのです。それは腐敗して毒素となり全身に蔓延します。現代人の腸の汚れの原因はそこにあるのです。
食物繊維と酵素が
腸の汚れをそうじしてくれる
戦後、医療はめざましく進歩しました。昔より健康になっていてもおかしくないと思うのですが、なぜ病気は増えつづけているのでしょうか?
それは腸に問題があるとわかっていないからです。先に述べたように、かつて日本人は野菜や穀類、豆類、発酵食品など古きよき日本食を食べてきました。それらは食物繊維や酵素など、腸がよろこぶ栄養素にあふれていた。ゆえに昔の人の腸は健康でした。かわって現代。欧米食が歓迎され、添加物をつかうことにも食べることにも慣れ、腸は汚れるばかり。結果、糖尿病やうつ病などの病気がみるみる増えてしまったのです。
なるほど。健康への意識が高い「野草だより」の読者のみなさんは、食物繊維や酵素の必要性にいちはやく気づき、日々努力されています。
すばらしいですね。酵素や食物繊維はわたしたちに不可欠なもの。毎日とりつづければ腸の汚れはそうじできますから、ぜひともその習慣をつづけてください。
そのいっぽうで、不調を感じたら医者にかかり、薬を処方されるという慣習もあります。はたしてこれでよいのかも疑問です。
現代は対症療法が主流です。医者はかんたんに薬を出しますし、患者さんは薬をもらえばなんとなく安心してしまう。しかしこれは悪習です。薬は百害あって一利なし。多くの腸内細菌を殺して腸を汚し、さらなる病気をつくりだしてしまう。そんな恐ろしいものを、安易に飲んではいけないのです。
さらに、現代の日本人は過剰な清潔志向に陥っています。腸内細菌は雑多な菌をとり込むことで活性化するため、除菌だ抗菌だと身の周りの菌をすべて排除したら腸は強くなれないのです。
大便は腸からの
大きな便りなのです
では、病気にならないためには、まず何からはじめたらよいのか。読者へのメッセージをお願いします。
ずばり言います。不調を感じたら、医者にかかる前に腸に聞く。つまり、腸からの便りである便を確認する。それが健康状態を把握するいちばんの方法なのです。よく「便なんてクサくて当然だ」と言う人がいますが、腸が健康ならば便はクサくありません。できれば、家族の便の状態もチェックしてあげてください。
医者にかかる前に、まずは腸の声を聞く。読者のみなさんにもきっと伝わったことと思います。本日はありがとうございました。
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あなたの便は大丈夫?
これまで一貫して「腸を健康に」と伝えつづけてきた藤田先生。その強い思いは「野草だより」の考えとも共通していると感じました。
次回からは「野草だより」にて、藤田先生の連載がはじまります。ご期待ください。