答えてくれる人
医学博士
藤田紘一郎先生
1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数
わたしたちの体内には2つのエンジンがある
みなさん、今日はなにを食べましたか? 主食の置きかえについてお話しした前回、「白米を玄米にかえた」「うどんの買い置きをやめました」などの声が寄せられました。みなさんの積極的な姿勢には、ただただ感心させられるばかりです。
さて、まずはおさらいから。50歳を過ぎたら糖質を制限し、腸がよろこぶ食事を、とお伝えしました。それはなぜなのか。今回はその理由をくわしくお話ししていきます。
わたしたちが考えたり歩いたりできるのは、酸素や食べ物などをとり込み、体内にある2つのエンジンでエネルギーをつくっているからです。それは「解糖エンジン」と「ミトコンドリアエンジン」。どちらも常に同時にはたらいていますが、メインで動くエンジンはある年齢を境に切りかわることがわかりました。その年齢こそが、50歳前後だったのです。
若いときにメインとなるのが「解糖エンジン」。これは糖質を燃料とし瞬発力に長けているため、機敏な動きや疲れを感じたときにすぐさまエネルギーをつくることができます。ですから、若いうちはエネルギッシュに動くためにも、ある程度の糖質が必要となります。
50歳を過ぎたら「糖質」が腸を汚す
いっぽう、50歳前後からは「ミトコンドリアエンジン」がメインに切りかわっていきます。酸素を燃料とし、長時間つづけて効率よくエネルギーをつくれる持久力が特徴。つまり、「長生きのためのエンジン」なのです。このエンジンのおかげで、腸は元気になって免疫力が高まり、病気を遠ざけることができます。
しかし、振りかえってみてください。健康診断の結果が気になったり、周りで大病する人が急に増えたのはいつからですか? おそらく、50歳前後と答えるでしょう。おかしいですね。ふつうならば、医者いらずの生活を送れているはずです。
からだはすでに糖質を必要としていない。なのに、食生活をかえずに糖質をとりつづけると、解糖エンジンがフル稼働。長生きエンジンは正常にはたらけなくなり、せっかくとり込んだ酸素を活性酸素にかえるという誤作動まで引き起こします。活性酸素はすべての細胞をサビつかせ、老化させ、寿命を縮める悪者。そのままにすると腸はドロドロに汚れ、動脈硬化や糖尿病、がんや脳卒中などの深刻な事態を招いてしまうのです。
これが、50歳を過ぎたら糖質を控えるべき最大の理由です。
あなたの腸は大丈夫ですか? さっそく今日から、「長生きエンジン」を動かす3ヵ条を実践しましょう。
今日からできる!
「長生きエンジン」を動かす3ヵ条
糖質を制限する
白米を玄米に、うどんをそばに。前回紹介した主食の置きかえで、腸がよろこぶ賢い食事を
酸素をたくさんとり込む
1日3回、ゆったりと深呼吸を。「丹田(おへそと恥骨の間)」を意識して、そこに酸素を送り込むようにすると効果的
からだを温める
長生きエンジンは体温が37℃になると活性化。からだを温めるには入浴が最適。シャワーですまさないように
すこしむずかしい話もありましたが、確かなのは「糖質が腸を汚す」ということです。はつらつと長生きするためには、今回ご紹介した3ヵ条がポイント。大きく息を吸い、いらないものをイメージしながらフーッと吐き出すと、心もからだも楽になりますよ。