「腸もれ」を防ぎたいなら毎朝のパンをやめなさい

答えてくれる人

医学博士

藤田紘一郎先生

1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数

あなたの体内にも
有害物質がもれ出している!?

2014年、とても衝撃的な研究報告がなされました。「人の血液中から生きた腸内細菌が見つかった」というのです。本来、腸内細菌は小腸から大腸、そして肛門を通って体外へ排出されるので、血液中にあるはずがありません。いったいなにが起こっているのでしょうか。

じつは近年、腸に細かな穴があく「腸もれ」を発症する人が急増。この研究をおこなった順天堂大学によると、健康な人でも25人に1人、生活習慣病を持つ人は4人に1人の割合だといいます。検査の精度が上がれば、もっと多くの人に腸もれが見つかることでしょう。

腸は老廃物や病原菌などを体内にとりこまないようにする、いわばからだの「門番」。ということは、穴があけばこれらの有害物質がからだの中にもれ出してしまうということです。

腸壁から毛細血管へ侵入した有害物質は全身をめぐり、体内のあちこちに炎症を起こします。すると倦怠感や口内炎、鼻炎などの不調が生じたり、血管をボロボロにして動脈硬化や心筋梗塞の引き金に。さらに、脳細胞を委縮させて認知症をも招いてしまう。恐ろしいことです。

そもそも、どうして腸に穴があくのでしょうか?

世界的なアスリートも実践する
グルテンフリー

あなたは朝食になにを食べていますか? 「パン派」だという方、その習慣こそが腸もれの最大の原因。パン、うどん、パスタ……これらの小麦製品に含まれる「グルテン」という成分が腸粘膜の炎症を起こし、穴をあけるのです。

グルテンをとると腸粘膜が炎症を起こす。すると細胞の連結がゆるみ、すき間ができて穴があいた状態になってしまう

昔から食されてきた小麦にそんな危険があるなんて信じがたいかもしれません。しかし、現在広く出まわっている小麦は、ふわふわとやわらかいパンが焼けるように品種改良され、グルテン量はひと昔前のものとくらべてなんと40倍も!

そこでいま注目されているのが、小麦製品をいっさいとらない「グルテンフリー」。世界的なテニスプレーヤー・ジョコビッチ選手も実践し、疲労感や鼻づまりなどの不調が改善して試合の成績も上がったそう。

「大好きなパンがダメだなんて」と落胆している方、ご安心ください。まずは、食べる頻度を週2回に減らすだけでも腸のダメージをかなり抑えられます。グルテンフリーの商品を利用するのも手ですね。

また、パンならライ麦や全粒粉のもの、麺類ならうどんよりそばを選びましょう。食物繊維が腸内細菌を活発にし、腸粘膜にバリアをつくってグルテンの害から守ってくれます。

だまされたと思って1週間試してみてください。答えはからだが教えてくれます。

今日から実践!
小麦製品の上手なとり方

食べる頻度を減らす

グルテンをとる頻度が多いほど腸に穴があきやすくなる。回復させる期間をつくるためにも、小麦製品は週2回程度に

食物繊維をいっしょにとる

ライ麦や全粒粉のパンを選ぶのはもちろん、サラダや具だくさんスープなど食物繊維を多くとる工夫を

「ふわふわ」「もちもち」食感のものを避ける

これらの食感はグルテンがつくる。硬めのフランスパンなどはグルテンがすくなく、噛むことで腸も元気に

朝食の定番のパンが腸もれの犯人だったなんて、衝撃でしたね。でも大丈夫。今回ご紹介した3つのポイントを実践し、傷んだ腸をいたわりましょう。連載もいよいよ20回。今後もご期待ください。

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2024/10/06 3:49:24