「究極の便」を出す者は100歳になっても老い知らず

答えてくれる人

医学博士

藤田紘一郎先生

1939-2021。寄生虫学、感染免疫学、熱帯病学を専門とし東京医科歯科大学名誉教授を務める。ユニークな視点と語り口から寄生虫博士、カイチュウ博士として人気を博す。著書に『笑うカイチュウ』、『腸内革命』、『脳はバカ、腸はかしこい』など多数

健康長寿の人たちの
ある共通点とは?

みなさんはご自身が何歳まで元気に過ごせると思いますか? 日本人の平均寿命は男女ともに80代ですが、100歳を超えても元気に活躍する方もいます。双子姉妹のきんさんぎんさんや、聖路加国際病院の日野原先生も、亡くなる直前まで精力的に活動していらっしゃいました。

といっても、彼らのからだが特別なわけではありません。長寿の秘密、それは「腸の若さ」です。きんさんぎんさんは味噌汁や野菜を毎食とり、日野原先生も糖質制限や軽い運動など腸がよろこぶ生活を送っていたのです。

現在活躍中で、見事な腸をお持ちなのが冒険家・三浦雄一郎さん(85歳)。彼は80歳という世界最高齢でエベレスト登頂に成功し、90歳までに4度目の登頂も視野に入れているという驚異のからだの持ち主です。

三浦さんは65歳のときに長年の不摂生が原因で余命3年と宣告されましたが、生活習慣をあらためたことでパワフルな腸を手に入れます。なんと登山中、時差や疲労があるにもかかわらず、毎日「大量の便」を出していたそうです。

便の量と健康にはいったいどんな関係があるのか。くわしくお話ししていきましょう。

日本人は戦前400gの便が出ていたが、現代は食の欧米化により半分に減少。いっぽう糞便量が多いケニア人は、がん患者がすくない
出典:数から科学を読む研究会『あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで』講談社(2015)より作成

病気の早期発見も!
便で健康状態をチェック

わたしは世界の人びとの便を収集し、これまでに10万個以上のサンプルを研究しました。その結果、ケニアやメキシコなど食物繊維たっぷりの食生活でドッサリ出している国ほど、がんなどの病気がすくなく、表情も活気に満ちあふれています。

便はただの食べかすだけではなく、その半分は腸内細菌の死骸や古くなった腸粘膜。つまり、量が多いほど腸の新陳代謝が活発で、免疫力も高い証。1972年に「腸と病気の関係」を明らかにしたイギリスのバーキット博士も、「便の量が多い国は病院が小さい」という言葉を残しています。

あなたは今日どんな便を出しましたか? わたしが唱える「究極の便」は、バナナ2本分の量。そして黄土色でクサくなく、ゆっくりと水に沈めばパーフェクト。硬さやニオイ、色も重要で、もし硬かったりゆるかったり、色が黒っぽい場合はからだの不調を知らせるサインです。右の表を参考に、生活習慣を見直していきましょう。

便を見れば健康状態や病気のリスクまで一目瞭然。医療でも「予防医学のカギ」として注目され、便のデータを収集する研究者が増えています。「汚い」とすぐに流してしまわずに、腸からの大切な便りをしっかり受けとりましょう。

食事や生活習慣を見直したり、健康食品をうまく活用しながら「究極の便」を目指そう

藤田先生にとって便の観察は「腸との交換日記」だそう。観察をつづければ、自分の腸がどんな食事や生活習慣が好きなのかわかると言います。わたしたちもさっそく今日から、腸との交換日記をはじめましょう!

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2024/10/06 4:45:57