電気を引き算したら、こんなに楽しい

ひと月の電気代500円。
アズマ家の生活をのぞく

テレビ、電子レンジ、携帯電話……。わたしたちの周りはさまざまな家電であふれている。便利である反面、エアコンのつかいすぎで夏バテしたり、電磁波が健康被害をもたらしたりと弊害も生まれている。

健康のためにも電化製品はなるべく引き算したいものだが、我慢を強いられそうで二の足を踏んでしまう。しかし、電気をほぼつかわずに生活する省エネ研究家のアズマカナコさんによれば、「電気の引き算は楽しい!」とのこと。7月上旬、東京郊外のアズマ家を訪ねた。

エアコン、掃除機、冷蔵庫
すべて引き算してみたら……

野草だよりの人気連載、「なるほどナットク引き算健康法」。家電の便利さがもたらす害をとりあげた第6回、そして家電の電磁波について述べた第9回はとりわけ反響が大きく、健康のためにも電化製品を引き算せねば、という声が多く集まった。そこで今回、家電をほぼつかわずに暮らす省エネ研究家のアズマカナコさんに引き算生活についてくわしく聞いた。

アズマカナコさん

1979年生まれ。東京郊外の一般家庭で7歳と4歳の2児を育てながら、大正生まれの祖母の暮らしを手本に昔ながらの生活を追求する省エネ生活研究家。車もエアコンも冷蔵庫もない自身の節電生活を漫画化した『節電かあさん』はじめ、『電気代500円。贅沢な毎日』『昭和がお手本 衣食住』など著書多数

取材当日は汗ばむ陽気だったが、エアコンのないアズマ家は思いのほか涼しい。築60年近い日本家屋は風通しがよい構造であるうえ、ゴーヤでつくった緑のカーテンが涼感をもたらすのだ。

「毎日つかう電気といえば居間とお風呂の照明くらいで、電気代は家族4人で毎月500円前後です。こう言うと節約大好き主婦と思われがちですが、わたしが小さいころに大正生まれの祖母が、『掃除機がなくてもホウキがあるよ』『金ダライでお洗濯できるよ』と教えてくれたことを実践しただけなんです」とアズマさん。60年前の生活を見本にしたところ、なんと冷蔵庫の引き算にまで成功。食材が余っても野菜は干したり漬ければ長持ちし、醤油やコンブといった日本の伝統的な調味料や乾物は常温で保存できるので困らないという。

冷蔵庫も電子レンジもない台所。広々としてぬくもりがある。もちろん電磁波とも無縁だ
4人暮らしで月の電気代は500円前後
ある日の昼食。鍋で炊いたご飯、自家製のぬか漬、カボチャの煮物、卵焼き、味噌汁、手づくりのふりかけ。冷蔵庫を引き算すると食事は自然と和食になった

「冷蔵庫を引き算したら、自然と和食中心の食事になったんですが、おかげで主人のコレステロールと中性脂肪が目に見えて下がりました。味の染みたお漬け物は子どもたちが大よろこびで食べるので野菜をとる量も増えたし、冷たいものを食べる機会が減ったら家族全員夏バテと無縁になりました!」

まさに引き算健康法だ。なお、ふたりの子どもたちにもテレビゲームや市販のおもちゃはほとんど与えていないそう。その結果、風呂敷1枚から変身ごっこのマント、おままごとの敷物、かばん……と遊び道具を自分達でつくりだすようになったという。モノがないことで創造力が培われるのもまた引き算健康法といえよう。

金ダライとせっけんで洗濯。もみ洗い後2回すすげば驚くほどキレイになる。手間がかかると思われがちだが、水も時間も節約できて洗濯機より効率的
風呂敷や空き缶も子どもたちにかかれば変身グッズに

大変だと思ったことは
一度もありません

家電の引き算は「つらい」「ガマン」というイメージが強かったが、アズマさんは無理をしているようには見えない。むしろ楽しそうだ。

「もともとは家電に囲まれて育ちましたが、大学時代に登山をして電気のない山小屋で1週間寝起きした際、『電気がないならどうするか?』を考えて工夫する生活がすごく楽しかったんです。それをふだんから実践したいと思ったとき、祖母の暮らしをお手本にすればいい、と気づいてはじめたのがいまの生活です。楽しい! が原点なので、電気の引き算を大変だと思ったことはありません。かわり者と言われることもありますし、最初は保存食の塩加減を間違えてカビを生やすなど失敗もしましたけれど、だんだん上達していく手ごたえがあるし、次はどうやって引き算しようかと考えるのがワクワクするんです」

テレビは見たいときだけ押入れから出す。目的もなくつい見てしまうことを防げる
狭い場所では掃除機よりホウキの方が小回りが利き、収納も場所をとらない
幼稚園の連絡網はメールでまわってくるため、節電生活でもパソコンは必需品

からだや環境によいことでも義務感ではつづかない。楽しければこその引き算なのだ。

「これからの乾燥する季節は干し野菜づくりで忙しくなりますが、干したカボチャの種を煮出したお茶は香ばしくて、飲むとみなさん笑顔になります。電気の引き算はおいしいものや楽しいことばかりです。冬になればコタツで家族団らん、春には子どもといっしょにヨモギを摘んで。家族の距離も自然と近くなりました」

四季を五感で受けとり、子どもたちと楽しく家事をする姿は実にゆたか。このゆたかさこそが引き算生活の醍醐味だ。家電の引き算は想像するよりずっとかんたん。あなたもはじめてみてはいかがだろうか?

みんな笑顔! カボチャの種茶

おかわりする取材スタッフが続出したお茶。電気をつかわずにつくれます。

①カボチャの種についたワタを除き、水洗いする

②カラカラになるまで天日で干す。天候にもよるが目安は3、4日

③干した種をフライパンに入れ焦げないよう混ぜながら弱火で10分程乾煎りする

④キツネ色になれば完成。熱湯で濃いめに煮出すとおいしいお茶になる

今日からすぐできる!
節電名人アズマさん直伝 電気の引き算

面白い番組も豊富
テレビを消してラジオを

テレビにくらべラジオは消費電力がすくなく、聴きながら家事や仕事ができるので時間を有効につかえます

明るい縁側では家事もはかどる
早寝早起き

太陽のリズムに合わせて生活すれば照明の引き算に。早起きすれば頭もシャッキリし、日あたりのよい窓際や縁側で過ごせば気持ちも明るくなります

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2024/04/28 5:09:07