鉄板の上でジュージューと音を立てて焼かれるおいしそうなステーキ。若いころはたくさん食べたけど、健康のためには控えないと……。そんなあなたに朗報だ。もうガマンしなくていい。ついに「健康のために肉を食べる」時代がやってきたのだ。
医学博士
藤田紘一郎先生
東京医科歯科大学名誉教授。自宅ではほとんど料理はしないというが、週2回のステーキだけはみずから腕を振るう
50歳を過ぎたら、
健康のために肉を食べなさい
いよいよ人生100年時代ともいわれる現代。誰もが「病気にならず、できるだけ健康で長生きしたい」と願っている。そんななか、意外な食べ物がわたしたちの健康長寿を叶えてくれると注目を集めている。
それは「肉」だ。昨年、厚生労働省は50歳以上におけるタンパク質の摂取量目安を引き上げた。その背景には、タンパク質が不足すると認知機能が低下したり、筋肉の衰えによる寝たきりの懸念などがあるという。
本誌でもおなじみ、医学博士の藤田紘一郎先生はこう話す。
「断言しましょう。肉を食べなければ長生きできません。これまでは粗食がよしとされてきましたが、50歳を過ぎたらむしろ肉を食べるべきなのです」
健康のために、肉を食べる。これはうれしいニュースだ。
「冒険家の三浦雄一郎さんや105歳で亡くなられた医師の日野原先生のように、歳をとっても元気な人は肉がお好きです。わたしも肉は大好物。今年82歳になりますがいまも週に2回、ステーキを食べています」
そこで取材班は、健康長寿の秘密を探るべく、先生のお食事に同席させていただいた。
コレステロールと血圧は
やや高めがいい
「ステーキといっても、牛豚鶏、お好きなものを召し上がってください。なぜステーキがいいのかというと、よく噛んで食べるから。それが運動になりエネルギーを消費してくれるのです。量はそうですね、わたしは200gくらい食べますね」
そう話しながら先生が口に運ぶのは、色とりどりの新鮮な野菜たち。
「コツさえ押さえれば、安心して肉を食べられるんです。まずはたっぷりの野菜を食べること。肉は悪玉菌のエサになりますが、食物繊維をいっしょにとれば腸は乱れません。それに、血糖値の急上昇を防いだり、胃もたれも軽減してくれます」
なるほど。野菜をたくさん食べられない人は、酵素飲料や青汁でとるのも手軽だ。でも、タンパク質なら魚や大豆でもいいのでは?
「肉でしかとれない栄養があります。それはコレステロール。そう聞くと顔をしかめる方がいますが、コレステロールが不足すると細胞が弱くなり、肌や髪にツヤがなく老けて見えます。だから菜食主義の方は短命なのです。わたしのような高齢者が若々しくいるためには必要な栄養素。最近ではコレステロールと血圧はやや高めの方がいいといわれていますから、週に2回は『肉の日』と決めて堂々と食べましょう」
話の途中で、鉄板からジュワッといい音が! 店内にはガーリックの香りが広がり、急に食欲がわいてくる。おいしそうなステーキを、先生はじつにおいしそうにペロリとたいらげた。
和食=健康食ではない?
おいしいステーキで若返り!
「もうひとつ気をつけるべきなのは、炭水化物を減らすこと。若いころは糖質がエネルギーになりますが、50歳を境にからだは変化します。糖質は不要になるので、わたしは白米は食べません。1日1回、雑穀米をすこしだけです。じつは和食も糖が多いのです」
意外な言葉が出てきた。確かによくよく考えてみると煮物や和え物など砂糖をつかう料理が多い。甘辛い味つけはご飯も進んでしまうため糖質過多になりがち。「和食は健康食」のイメージも、もはや常識ではないということだ。
そして最後に、先生はこう語ってくれた。
「食事は生きる楽しみのひとつ。好きな人と『おいしいね』と言いながら、じっくり肉を味わってください。そうすれば一生ボケずに自分の足で歩ける、理想的な『長生きさん』になれますよ」
おいしく食べるだけでみるみる若返り。なんともいい響きだ。さあ、今日から胸を張って、おいしいステーキをいただこうじゃないか。
プロが教える!
家庭でもおいしいステーキの焼き方
抗酸化作用のあるオリーブオイルとニンニクで、手軽においしく!
1 30分前から肉を室温に
これを怠ると表面が焦げたり、中まで火が通らない原因に
2 すこしずつ火力を上げる
弱火からスタートし、徐々に火力を強める。高温になり過ぎると肉が硬くなるので注意
3 最後に焼き色をつける
取材協力
鉄板焼き 表参道
東京都渋谷区神宮前5-49-2
☎050-5456-6722