「健康のためにやっていることは?」
こんなアンケートをとると、「運動」「食事」に関する回答が多く集まります。このふたつが健康に欠かせないことは、もはや誰もが知っています。
そしていま、それらにくわえ注目されているのが「睡眠」です。これまで、ただの休息時間だと考えられてきましたが、最新の研究では睡眠が血圧や血糖値を左右することや、免疫力、記憶力に大きく関与することなどがわかってきました。「眠りの質が人生をかえる」といってもよいのです。
そんな不思議な「眠り」の世界のこと、一問一答形式でご紹介いたします。
朝日を浴びるとぐっすり眠れる?
ホント
人の生体リズムは約25時間周期。そのため放っておくと睡眠時間はどんどん後ろにずれてしまいます。でも、毎朝太陽の光を浴びて脳に朝が来たことを知らせると、体内時計の狂いが修正され、夜に自然な眠気を感じるようになります。
健康によいのは8時間睡眠?
ウソ
睡眠時間は6.5~7.5時間がもっとも死亡リスクが低く寿命が長い傾向にある、とわかっています。長生きできるだけでなく、血圧の上昇を抑えたり、アルツハイマー病の原因物質が溜まるのを防いだりと健康効果も抜群です。
なお、年齢が上がると必要な睡眠時間がみじかくなることも合わせて知っておいてください。
携帯電話をつかい過ぎると
不眠になる?
ホント
携帯電話やテレビ、パソコンの画面が発する「ブルーライト」という光は交感神経に強くはたらきかけるため、つかい過ぎると興奮状態がつづいて寝つきを悪くします。最終的に不眠になることも。さらに電磁波も発生しからだに悪影響なので「寝室に持ちこまない」がよい眠りを守る原則です。
寝る前は水分をとらない方が
健康によい?
ウソ
中高年になると、夜中にトイレに起きる回数が増えます。その対策として寝る前は水分を控える方が多いですね。ところが、これは健康にとって逆効果。就寝中は呼吸や発汗で水分が大量に失われるため、寝る前はコップ1杯の水を飲むほうが血管のつまりの予防になりからだによいでしょう。緑茶やアルコールは利尿作用があり水分補給に適さないので、必ず「水」を選ぶのがポイントです。夜中にトイレに起きるのが不快という方は、照明をなるべく暗く保って用を足すとスムーズに寝つく助けになります。
睡眠不足がつづくと太る?
ホント
睡眠時間が6時間を切ると「太らせホルモン」グレリンの分泌が増えて食欲が増します。さらに、基礎代謝に関わる「成長ホルモン」の分泌は減るため睡眠中のカロリー消費は低下。肥満を招くのです。
睡眠不足は肥満以外にも脳やからだへ悪影響があり、脳がうつ病に似た状態になる、血中ブドウ糖の処理能力が落ちて糖尿病の初期状態になるなど、衝撃的な報告が寄せられています。
熱いお風呂で汗をかいたあと、
すぐ布団に入ると熟睡できる?
ウソ
お風呂上がりに布団に飛びこむと、気持ちがいいですね。けれど、人間のからだは体温が下がったとき眠気を感じるので、入浴後すぐは体温が下がりきらず逆効果。眠る2~3時間前に38~40℃ほどのお湯にゆっくり浸かる方が熟睡につながります。
ぐっすり眠るには幅広の寝具?
ホント
よい眠りには寝具選びも大切。つかう人の体格で寝具に必要な硬さがかわるため、「この寝具がベスト」とは決められませんが、幅広マットレスは快眠に欠かせない「寝返り」が打ちやすくおすすめ。枕も幅が広いと寝返り時に頭が落ちにくいので、寝具選びに迷ったら「幅の広いもの」と覚えましょう。
昼寝をすると夜にぐっすり眠れる?
ホント
昼に寝ると夜は眠れないように思えますが、じつは逆。昼に10~20分の仮眠をとると午後の疲労度が下がり、夜の睡眠の質を高めます。長寿で知られる沖縄では昔から昼寝の習慣があるように、健康と密接な関係にあるのです。
眠りにいいのは
コーンスープより味噌汁?
ホント
眠りに関わるホルモン、セロトニンとメラトニン。これらは天然の食材に含まれる「トリプトファン」という栄養がないと体内で合成できません。そんなトリプトファンが豊富な「快眠食材」といえば、味噌や豆腐などの大豆製品、魚、肉、乳製品、ナッツ類です。味噌は発酵させているため消化にもよく、毎日積極的に味噌汁を飲めば快眠につながります。
春眠、暁を覚えず。
春に眠くなるのは思いこみ?
ウソ
人間のからだは、脳やからだが活発なときにはたらく交感神経と、睡眠やリラックス時にはたらく副交感神経のふたつで成り立っています。冬から春など季節のかわりめはこれらのバランスがくずれやすく、睡眠サイクルが狂って昼間から眠くなりがち。また、寒さがゆるむと脳やからだがリラックスして眠気が発生するという面も。「春眠…」の言葉は医学的に説明できるものです。
眠りの相談室
編集部に寄せられた眠りのお悩み。睡眠の専門家、白濱龍太郎先生が特別にお答えします。
白濱龍太郎先生
睡眠専門医。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』『“ぐっすり”の練習ノート』など著書も多数
寝つきはよい方ですが、65歳を過ぎたあたりから早朝に目が覚めます。
東京都 70歳 女性
就寝22時 起床4時
歳とともに必要な睡眠時間は変化します。理想の睡眠時間6.5~7.5時間に満たずとも、寝起きがスッキリして日中に眠気がなければ大丈夫です。また、睡眠は時間以上に「質」も重要。この特集では「良質な睡眠」をとるコツをいろいろ紹介していますので、今晩からとり入れてみてください。
日中は常に眠く、よく居眠りします。家族から「運転しないで」と言われるものの、車がないと生活できないため困っています。
島根県 73歳 男性
就寝22時 起床3時 昼寝2~3時間
睡眠時間は年齢とともに減少する傾向にありますが、5時間の睡眠はややみじかいですね。日中の眠気や長時間の昼寝は、足りない睡眠時間を補おうとしているのかもしれません。夜間にしっかり眠るようにしましょう。まず、昼寝は30分以内に。ベッドでなくイスや机にもたれて休み、目覚まし時計をかけるとよいですね。「アルツハイマー病患者の多くは1日3時間程度の昼寝をする」というデータもあるように、昼寝の時間はみじかい方が健康効果も高いですよ。
※改善が見られない場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるため専門機関での受診をおすすめします。
わたしは保険の外交員。歩きまわって疲れているのに、深夜になっても目がさえたまま。どうすれば寝つきがよくなりますか?
愛知県 55歳 女性
就寝1時半 起床7時
疲れているのに眠れないとつらいものです。「はやく寝なければ」という焦りでますます眠れなくなるケースも多く、悪循環になりがちです。そんな寝つきの悪さの原因のひとつは、ストレスや緊張。まずこれを和らげてあげましょう。やり方はかんたん、夕方6時に結った髪をといてとかしてください。首にスカーフをしていれば外します。男性の場合はネクタイを外すかゆるめる。これで頸動脈への圧迫がゆるみ交感神経が鎮まって副交感神経が優位になり、意識が「眠り」に向きます。ぜひお試しくださいね。