発酵食品、万歳!

郷土料理研究家 横山タカ子 ×
ミヤトウ野草研究所 近藤堯

日本の伝統的な食文化のひとつ、発酵食品。ここ数年、あらためてその価値が見直されはじめている。それは、“おいしさ”や“保存食”といった側面のほかに、“健康効果”としての一面が認められてきたからだ。

北アルプスの麓、長野県はそんな発酵食品の宝庫である。信州味噌や漬けものといえば、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。

信州の郷土料理を探求する横山タカ子さんは、発酵にも造詣の深い料理研究家だ。いっぽう、『野草酵素』の生みの親である近藤堯会長は、酵素研究の第一人者。言わば発酵のプロである。

新年、そんな発酵のスペシャリストふたりが肩を並べた。話題に上がるのはやはり、語り尽くせないほどの発酵食品の魅力ばかり。

株式会社ミヤトウ野草研究所
近藤堯会長

新潟県立高田農学校卒業と同時に国立大宮家畜研究所に勤務し、研究生活をスタートさせた。戦後の食糧難解決のために家畜と飼料の研究を進め、酵素の役割に着目。そして昭和27年、酵素原液の試作・開発に成功。「生涯研究者」をモットーに、「酵素」、「発酵」の追求をつづける

郷土料理研究家
横山タカ子

長野県安曇野生まれ。料理上手な母親の影響を受け、料理の道へ。ご自宅にて料理教室を主宰。長野県カルチャーセンター講師も勤める。身近な素材と郷土食、発酵食品を活かしたアイデア料理に定評。著書に『作って楽しむ信州の保存食』、『作って楽しむ信州の漬物』など

共通する食の思い出、
気候風土が育む先人の知恵

――まずはじめに。おふたりの出身は長野県と新潟県、すぐ隣の地域で幼少期をお過ごしになったわけですが、子どものころ食べたおふくろの味を憶えていますか?

横山 わたしは、長野県安曇野という田舎町で育ちました。信州でも、お米がよくとれた地域だったので、「こねつけ*1」や「凍り餅*2」をよく食べた思い出があります。母が寒い時季につくる保存食なんですけどね。ご存じですか?

近藤 うちの地域でも、似たようなものをつくっていました。「かきもち」や「干し柿」、「干し大根」、みんな発酵のちからを活かした保存食です。

横山 懐かしいですね。あと、やっぱりお漬けものやお味噌は外せませんよね!

近藤 ええ、もちろん。我われの時代は、どこの家庭でも味噌づくりをしていたし、祖母の漬けた野沢菜やたくわんの味は、いまでも忘れられません。

横山さんのご自宅には、自家製のジャムやシロップ、乾燥させた野菜などがぎっしり貯蔵されています。ここに収まらないものは、ご自宅のいたるところに収納・レイアウトされています
玄関にはおもむきのある瓶(かめ)が。このなかには、手づくりの信州味噌が貯蔵されています

横山 夕飯前についついつまみ食いをしたりして(笑)。でも、先人たちの寒い地域を生き抜く知恵には、感心することばかりですね。お漬けものやお味噌が信州名物になったのも、発酵食品が先人たちの生命を支えたからではないかと。

近藤 それは興味深い考え方ですね。ちょっと待ってください。大切なお話の前に、この大根をいただいてもいいですか?(一同笑)

*1残ったごはんに小麦粉を加えてつくる信州の郷土食・おやつ。

*2ついた餅米を屋外に吊るし、気温を活かしてつくるお餅。寒暖の差が激しい信州ならではの保存食。

長寿の里と呼ばれる由縁、
それは発酵食品にあり

――まるで絵画でも見ているかのようなお料理は、すべて発酵のちからを活かした横山さんのアイデア料理。近藤会長、お味はどうでしょう? それではお話の続きを。

横山 たとえば、野沢菜ひとつとってもそう。生で食べるよりも、発酵させたほうがビタミンやミネラルが高まりますよね。たまに食べる動物性たんぱく質だって、塩蔵された発酵食品。極寒の地を生きるための先人の知恵や工夫が保存食を生み、無意識のうちに健康食として育まれたんだと思うんです。

近藤 わたしもそう思います。信州味噌や漬けものはその最たるものでしょう。ましてや、長野県は長寿の里としても有名だ。根の深い発酵食文化こそが、長寿の里をつくったといっても過言ではない。

これが信州名物の野沢菜漬け。すこしピリッとした昔ながらの味を、近藤会長は懐かしく感じたようです
こちらは、わらびの白和え。「お豆腐のもつビタミンE(抗酸化力)やミネラル分が、からだの代謝、美肌効果を助けます」と横山さん
調理風景のいち場面。「近藤会長のお口に合うかしら」と横山さん。着るものも日本のものにこだわりたいと、365日着物での生活を心がけているそうです

横山 前にお仕事をした漢方の先生も、「発酵食品は免疫力を高め、アレルギーを予防する」と言っていました。

近藤 それはすなわち、乳酸菌のちからですね。さらに発酵はアルコールを生み、日を増すごとに旨味に変化していく。保存が効き、味を楽しめて、健康をも守ってくれる。理にかなったすばらしい食品ですよね。

ゆたかな食生活へ警鐘、
ほんとうの地産地消とは?

――やはり、長野県の気候風土も手伝い、他の地域では見られないほどの健康効果を生んだのでしょうか?

横山 もちろん、そうだと思いますよ。逆に新潟県には新潟県の気候風土にあったものがありますよね。お米やお酒、山菜に野草だってそう! 近藤会長は、そんな野草の発酵や酵素研究をもう60年以上もなさってる。わたしにはむずかしくて真似できません。

近藤 そんなことありませんよ。横山さんも味噌や漬けものを手づくりされているでしょう。要は同じ。ぬか床のなかでは、数十億もの微生物たちが食材を雑菌の繁殖・腐敗から守り、酵素を生み、絶妙な味、風味を与えて、からだに有用な栄養素をつくりだす。この延長線上に『野草酵素』はあります。だから、わたしが特別なのではなく、強いて言うならばやはり、「発酵」そのものがすごい。

今回、『野草酵素』をつかったレシピを考案してくださった横山さん。その名も『さしす・野草酵素ドレッシング』! 作り方は、『野草酵素』を1に対して「さしす」を2の割合で混ぜるだけのお手軽さ。「さしす」とは、砂糖、塩、酢に梅干しを漬けた横山さん開発の梅酢
「うん、うまい! すごく相性がいいんですね」『さしす・野草酵素ドレッシング』の味に大満足の近藤会長。研究所の社員みんなにレシピを教えてあげたいそうです

横山 発酵そのものがすごい! それなら、わたしも共感できます。それに近藤会長は国産原料にこだわってらっしゃる。そこにも強く共感しています。

近藤 ほう、と言いますと?

横山 戦後、ゆたかな食生活を手に入れた日本人は、いまでは地球の裏側にまで長い箸を伸ばすようになりました。その影響が、さまざまな生活習慣病のもとなのではないかと……。先人たちのように、自分の生活している同じ気候で育った食材や調味料をいただくことこそが、いちばんからだに合っていると思うんです。

近藤 同感です。『野草酵素』が、国産原料や手づくりにこだわる点はそこにあります。そしてこれは、ほんとうの意味での“地産地消”と言えるのかも知れませんね。

口は生命の源ゆえに、
本物の味を伝承したい

――保存食、そして健康食として見直される発酵食品。今後、このすばらしい食文化をどのように後世へ残していきますか?

横山 もっと、発酵食品の“手軽さ”を広めたいです。「しょうゆ麹」なんて、ほんのひと手間。かんたんなものからはじめてもらい、三度三度の食事メニューにとりいれてほしい。

近藤 じっさいに、お料理教室での生徒さんたちの反応は?

横山 ご年配の方はもちろん、若い世代の方にも大評判なんです。イチからつくったお漬けものの味に感動したり、手づくりが持つあたたかみ、尊さにも共感してくださる。より本物志向の方が増えた証拠なのかも知れません。

近藤 本物の発酵食品ですか! たしかに市販品とくらべれば、違いは一目瞭然でしょう。

横山 口は生命の源です。それは食育の観点でも同じこと。子どもの舌を育て、丈夫なからだをつくる。それが発酵食品なんですよね。

今回は、横山さんのご自宅にて、手づくりの発酵食料理を囲んでの対談となりました。おいしいお料理の数々、お部屋のあちらこちらにみられる素敵な家具、発酵食品の魅力を深く掘り下げる話ができたことで近藤会長もご満悦の様子

近藤 まさに医食同源。量産されるまがいものではなく、本物だけを選んでほしい。だからこそわたしは、今後も姿勢を変えることなく、国産原料、手づくりにこだわりたい。たくさんの人びとが、よろこんでくださるものだと信じているから。5年、10年先を見越して酵素研究をつづける。それがわたしの使命なんです。

横山 ほんとうに素敵なお考えですね。お互いに、すばらしきこの発酵食文化そのものを、未来へ残せるよう努力していきましょう。

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2024/02/23 10:50:35