特集・食と健康

栄養まるごといただきます!

今日からできる。
おトクな食べ方、教えます

肉・魚・野菜・くだもの・豆・海藻……わたしたちが日々口にする食べ物は、調理法や食べ方によって栄養価がかわってしまうことをご存じですか?管理栄養士の赤石定典氏に、かんたんにムダなく、栄養をしっかりとれる食べ方を教えていただきました。

赤石定典氏

管理栄養士。東京慈恵会医科大学附属病院にて入院患者の献立作成や栄養指導をおこなう。書籍『その調理、9割の栄養捨ててます!』『はじめての減塩』『あなたが太っているのは、栄養不足のせい』などを監修

気づかないうちに陥る人が続出。
低栄養にご用心!

「この飽食の時代に……」と思うかもしれませんが、とくに高齢者の低栄養が問題となっています。

65歳以上で低栄養傾向にある人の割合は16.4%。なかでも80歳以上では19.3%と、約5人にひとりは低栄養の恐れがあります。歳とともに食事の量が減りあっさりしたものを好むようになると、エネルギーやタンパク質が不足。食事の支度が面倒だからと肉や生野菜を口にしなくなれば、ビタミンやミネラル、食物繊維なども必要量がとれません。低栄養に陥ると免疫力が下がって感染症にかかりやすくなるだけでなく、認知機能や筋力・体力までも低下してしまいます。

最近の食事を思い出してみましょう。「おかずは漬物だけ」「おにぎり1個だけ」といったメニューになっていませんか?

熱いご飯に納豆を乗せないで!

炊きたての熱いご飯と納豆の組み合わせが大好きという方、ちょっと待ってください。

納豆に含まれるナットウキナーゼは熱に弱い酵素。50℃以上で活性が鈍くなり、70℃になるとほとんどはたらかなくなってしまいます。ご飯といっしょに食べたいときは「湯気が立たない程度の温かさ(45℃前後)になってから納豆を乗せるのがベストです」(赤石氏)。

ご飯以外でも、冷たいそばやサラダに乗せればナットウキナーゼの活性を失うことなくそのまま摂取できますね。

納豆のネバネバに含まれるナットウキナーゼには、血栓の素となるタンパク質を溶かすはたらきが

旬の野菜をあなどってはいけない

夏にホウレンソウのおひたし、冬にトマトとキュウリのサラダがあたり前のように食べられる現代。農業技術の発達や輸入によって1年中同じ野菜が手に入る生活は、とっても便利でありがたいですよね。

でも、絶対に食べてほしいのが旬の野菜。安い・おいしい・優れた栄養価の三拍子がそろった優等生です。旬をむかえた12月のホウレンソウが持つビタミンCは9月の約4倍、7月のトマトのカロテンは11月の約2倍も多く含まれるのです。これを食べないなんて絶対にもったいない!

スーパーの野菜売り場にいったら、まずは旬の野菜をチェックしてみましょう。

クエン酸でカルシウムを賢く摂取

食品の栄養素は、食べた量がそのまますべて体内にとりこまれるわけではありません。一部が吸収され、残りは排出されてしまうのです。

たとえばカルシウム。吸収率は野菜が約19%、小魚が約33%、牛乳なら約40%と、じつは食品によって異なります。

牛乳を飲んだり魚を食べるときにおトクなのが、レモンや酢に含まれるクエン酸と合わせてとる方法! クエン酸は、小腸からのカルシウムの吸収を促進することが研究で明らかになっています。

牛乳に果実酢を混ぜて飲んだり、魚を煮る際に酢をくわえるなどするといいですね。

○○するだけで血液サラサラ効果が
パワーアップ!

タマネギやニンニク、ニラのにおい成分、硫化アリル。切ったりつぶしたりして細胞を壊すことで、血液をサラサラにして血栓を予防するアリシンに変化します。

細かく刻めば刻むほど効果的ですが、ポイントはこれを10分間放置すること。アリシンがさらに活性化し、殺菌効果も最高潮になります。ただし、長時間放置するとアリシンの効果が激減してしまうのでご注意を。

10分経ったらはやめに調理し、血液サラサラ効果をまるごととり入れましょう。

水にさらすのはNG。アリシンはもちろん水溶性ビタミンも流れ出てしまう

野菜ファーストが血糖値の上昇を
ゆるやかに

血糖値は1日の中で変動するものですが、振れ幅が激しいと血管や内臓にダメージを与えてしまいます。

そこで提案したいのが「野菜ファースト」の食べ方です。食事の際、まず最初に野菜を食べること。野菜の食物繊維が糖質の吸収をゆるやかにしてくれます。炭水化物は吸収されやすく、先に食べると血糖値が急上昇。「食べる順番は①野菜・汁物②肉や魚などのタンパク質③ご飯などの炭水化物、と心得ましょう」(赤石氏)。

サラダを先に食べた場合、血糖値の急上昇が抑えられ振れ幅も小さい
出典:金本郁男他. 糖尿病. 2010;53(2):96-101.より作成

油といっしょに炒めれば
吸収率がグーンと上昇!

ニンジンにコンブ、ナス。これらは油で炒めた方がおトクな食材です。

ニンジンを生で食べた場合、脂溶性ビタミンのβ‒カロテン吸収率は8%程度ですが、油をつかって炒めるとなんと70%まで上昇!

だしをとったあとのコンブにもβ‒カロテンや水に溶けない抗アレルギー成分がたっぷり残っていますから、細切りにして炒め物にくわえればムダがありませんね。

また、ナスの皮に含まれる抗酸化物質・ナスニンは水にさらしたり煮たりすることで流出します。こちらも油でしっかりコーティングして栄養素を逃さずいただきましょう。

皮をむかないで!
そこにまだまだ栄養が……

野菜の皮をむくようになったのは戦後から。食感や残留農薬を気にする人が増えたからだといわれています。でも、皮だからとなんでも捨ててしまってはもったいない!

ジャガイモやダイコンの皮はビタミンCが豊富に含まれていますから、皮ごとゆでたりすりおろしたりすればビタミンCを捨てずに済みます。ゴボウの皮には脂肪の蓄積を防ぐ抗酸化物質・クロロゲン酸が根の2倍も。泥つきの新鮮なゴボウなら、たわしでこすって洗うだけでじゅうぶんです。ささがきにしてゆでるとクロロゲン酸の残存率が8%まで減ってしまいますが、皮ごと輪切りでつかえば最大72%にもなりますよ。

栄養豊富な半熟卵、
腹持ちバッチリ固ゆで卵

半熟卵と固ゆで卵。じつは食感だけでなく栄養価にも差があります。

そもそも、卵はタンパク質をはじめミネラルやビタミン類も含むスーパーフード。まるごと栄養素をとり入れたいところですが、生卵ではタンパク質が51%しか吸収されません。しかし吸収率を上げようと加熱し過ぎればその他の栄養素が減少。骨の健康や免疫機能に欠かせないビタミンDは、最大61%も失われてしまうのです。

半熟卵なら栄養素の損失もすくなく、タンパク質の吸収率もアップしていいことずくめ。対して「タンパク質が完全に変性する固ゆで卵は胃に留まる時間が長く腹持ちがよいので、食べ過ぎを防ぎたいときにおすすめです」(赤石氏)。

single.php

2024/10/06 3:47:34