『野草酵素』の原料のひとつ、ハトムギ。イネ科の一年草で、漢方ではヨクイニンと言う。中国薬学書の古典『本草綱目』を紐解くと、消炎、利尿、鎮痛、排膿、強壮など多くの薬効が記されている。
最近ではハトムギ茶なども人気が高いが、国内シェアの大半は中国やタイなどの外国産が中心。低価格ではあるものの、農薬漬けのうえ大量の防カビ剤がふりかけられてから船に積まれるのだから、安心・安全とはほど遠い。
国内流通のうち国産品はたったの10%程度で、原価は外国産の3倍近く。そして良質なものは限られ、近藤会長もなかなか満足のいくものに出会えなかった。全国の産地を訪ね歩き、辿りついたのが、ここ富山県小矢部市。決め手は、「完熟」にあったという。

風を読み、色をたしかめ
収穫のタイミングを見極める
広大な田園がつづく、砺波(となみ)平野。ところどころに民家が点在する独特の風景は、散居村(さんきょそん)(*)とよばれるものだ。家々はみな「垣入(かいにょ)」という防風林に囲まれ、当地の気候の厳しさを物語る。
「地平線に青く浮かんでいるのが、立山連峰です。あの山々のおかげで台風の被害はなんとか免れていますが、このとおり、風はいつだって強い」 我われを案内してくれたのは、小矢部市のハトムギ栽培を牽引する、和田俊信さん(61歳)。この日、まさにハトムギは完熟をむかえ、駆け足で収穫がすすんでいた。
「熟しはじめると、幹と穂をつなぐ穂軸が日に日に弱くなっていく。だから、収穫日を1日でも見誤れば、強風で実がすべて落ちてしまうかもしれない。この時季は毎日、風を読み、ひと粒ひと粒の色を目でたしかめ、一瞬のタイミングを見極めなければいけないんです」

小矢部市でハトムギ栽培がはじまった当初より、中心的役割を担うベテラン。生育法から機材の改良に至るまで熟知し、ときには全国を飛び回り指導にはげむ

じつはほかの産地では、完熟前に収穫する「早刈り」が一般的。その方が気候の影響を受けず、安定供給を維持できるためだ。しかし小矢部では、はじめに熟す先端の実を犠牲にしてまで、房全体が熟すのを待つという。そこまでして完熟にこだわる理由はなにか。
*広大な耕地に、民家が散らばって点在する集落形態。一般的には散村とよばれる。「散居村」は富山県特有のよび名。
完熟したハトムギだけが
発酵を導く栄養源になる
「ここのハトムギは、背丈が通常の1.5倍ほども大きく成長します。これは小矢部の土や水に、豊富な栄養分が眠っている証拠。それならぎりぎりまで栄養分を吸わせ、限界まで完熟させたい。そうしなければ、この土地で育てる意味がないんです」
さらにハトムギ自体をつかった、有機肥料にもとり組んでいるという。和田さんはつづける。
「穂の先端のみを刈り、幹はすべて裁断して土に返します。ハトムギは風に倒されてもまた起き上がってくるような、生命力の強い植物。天然の肥料として、これほど贅沢なものはありません」


恵まれた土壌に余計なものはくわえず、いいものだけを循環させる。品質は向上するいっぽうで、栄養価も計り知れない。ここに着目したのが近藤会長だ。
「全国を回り、あらゆる産地のハトムギを顕微鏡にかけた。エキスの重さから糖度まで、わずかな不足にも妥協できなかったからね。あるとき、真っ黒に熟した小矢部のハトムギを調べて驚いたよ。他に類を見ない高い糖度、そしてミネラルにあふれていたんだ」


大地から吸い上げた糖質とミネラルは、有用菌の栄養源となり、発酵を勢いづける。
「酵素づくりには、自然の栄養分をいかに蓄えているかが重要。和田さんのハトムギに出会ったとき、これなら間違いないと確信しました」
飲む人の顔を思い浮かべて
化学肥料なんてふりまけない
収穫時のリスクを負ってまで完熟を求め、有機肥料をつかって安全性にも余念がない。品質を維持するためとはいえ、あまりに手間のかかる作業だ。いったいなにが生産者を駆り立てるのか。和田さんとともにハトムギ栽培の指導的立場を担う、中山智章さん(51歳)に疑問をぶつけた。
「農薬をたくさんつかって早刈りをすれば、もっと効率的な生産は望めます。利益を追求するだけなら、それでもいい。しかし近藤会長のように、質の高いものを求め、選んでくれる人がいる。その先には、からだによいものだと信じて、毎日飲んでくれる人たちがいる。生産者にとって、こんなに幸せなことはありません。『野草酵素』を飲んでいる人たちの顔を思い浮かべたら、化学肥料なんてとてもふりまけない」


手をかけ、心をこめ、質のよいもの、安心できるものをつくりたい。彼らの言葉はどこまでも誠実だ。近藤会長が酵素研究にかける思いとも相通ずる。
「わたしも和田さんたちと気持ちは同じ。健康を願う人のために、本当にいいものだけをつくりたい。妥協は許されないんだよ」
大量生産とは一線を画す、心の国産を求めて。近藤会長の熱意が冷めることはない。
