おいしくおなかいっぱい食べながら、からだをそうじして、いつまでも病気知らずで若々しくありたい。そんな願いをかなえる食事を、わたしたち野草酵素は「酵素ごはん」と名づけた。酵素をしっかりとり、そのはたらきを助け、ムダにしない食のあり方を、回を重ねて紹介していくシリーズ。第1回は、暑さに負けず夏を乗り切るための酵素ごはん。暑さ厳しい山形で生まれ、受け継がれてきた郷土料理には、酵素と先人の知恵がたっぷりつまっていた。
野菜、そば、発酵食品。
酵素たっぷりの食卓
東に奥羽山脈、西には朝日山地。その中心部を雄大な最上川がゆったりと流れる。山に囲まれた盆地である山形の夏は、とにかく暑い。1933年に山形市で記録された40.8℃は、2007年に熊谷市で40.9℃を観測するまで74年間、日本最高記録であったほどだ。その厳しい暑さをしのぐため、山形の人が代々、大切にしてきたのが郷土料理だ。調べてみると、その一品一品がからだの免疫力を上げる、優れた「酵素ごはん」であることがわかる。
山形の郷土料理をいろいろと探っていくと「そばの里」とよばれる山里のお店で、珍しい味に出会った。辛味大根のおろしにそばつゆをくわえて食すそばである。ぴりっとしたおろしがそばの甘みを引き立てて美味なうえ、生の大根の酵素はすりおろすことで細胞の中の酵素が活性化し、しっかりとり入れることができる。いつからはじまった食べ方かは定かでないが、山里の生活から生まれたじつに理にかなった食習慣だ。
山形育ちの郷土料理研究家、新関さとみさんはこう語る。
「夏は暑く冬は寒く、昼夜の寒暖差も大きい山形では、野菜は甘みやうま味を溜めて、おいしく育ちます。だから、からだを冷やし、暑さをやわらげてくれる生の夏野菜の調理法が多いのです。このように夏野菜の効用を生かす工夫が、山形の郷土料理のいちばんの特徴です」
郷土料理研究家
新関さとみさん(52歳)
山形県天童市に育ち、山形市西部の大曽根地区の味噌・醤油醸造元へ嫁ぐ。家庭で漬物を漬ける伝統を継承するため、さとみの漬物講座企業組合を設立。テレビ出演や新聞連載などで活躍中
取材協力
七兵衛そば
山形県北村山郡大石田町次年子266
☎0237-35-4098
もとは近所の人たちにふるまっていたそばの味が評判となり開業。いまでは平日でも満員の人気店だ
夏のほてりがすっと消える
名物「だし」はおふくろの味
いっぽう、発酵食である漬物も種類が豊富。春の山菜、夏の野菜など野山の旬の恵みを、雪深い冬に向けて保存食にするために発達した古来の知恵だ。
「生の食材にくわえて、漬物からも、また料理によくつかう納豆、味噌などの発酵食品からも酵素をたっぷりとってきたわけです」
そして地元の人が「夏の山形のおふくろの味」と口をそろえる料理が「だし」。キュウリやナス、ミョウガ、青ジソなどを細かく刻み、醬油で味つけしたもので、ごはんや豆腐、ひやむぎなどにかけて食べる。
山形では昔もいまも食事どきとなると、自分の畑からキュウリやナスなど夏野菜をもいできて、急いで刻み、だしをつくる。とれたての新鮮な野菜でつくりたてでないと味が落ちるし、おまけに必ず手切りでなくてはいけない。フードプロセッサーでは決して、夏野菜のみずみずしい食感が出せないという。また刻むことで大根おろしと同じく、酵素が活性化する。これは文句なく最強の「酵素ごはん」だ。
新関さんが「だしを食べるとスーッとからだのほてりがとれ、暑さをふき飛ばせる」と言うとおり、食べてみると、たしかに旬の夏野菜それぞれのさわやかな味わいと、シャキシャキとした食感が絶品。自然に暑さを忘れ、心が安らぐ。食欲がないときでもごはんを進ませ、体力を維持してくれる、夏の定番だ。
山菜の食物繊維、えごまや
くるみの上質な油も元気の源
山形県村山市がつくった「郷土料理百選番付」によると、その「だし」は堂々、東の横綱。対する西の横綱は「ワラビの一本漬け」だ。春に山でとれたワラビは風味が落ちないよう、切らずに一本のまま漬ける。素材を丸ごとつかうため、抗酸化作用によりからだの毒素を洗い流すフィトケミカルもとれる。
その山菜と同様、野草のヒョウ(スベリヒユ)もよく食べる。これも酵素と食物繊維たっぷりの素材だ。
さて、これでは野菜ばかり食べて夏バテしないのかと疑問を持たれるかもしれない。たしかに、からだにとり入れた酵素をムダにせず、しっかりからだのそうじをするためには上質な油をとることも必要だ。そこで山形人が昔から親しんできたのがえごま(地元でのよび名は白あぶら)と、くるみである。
山形で忘れてならないのがそば文化だが、そばがきのたれにも、えごまとくるみがつかわれる。こってり濃厚な油のうま味と、くるみのほのかな甘みがたまらない。これぞ夏の元気食だ。そばがきに、この甘いたれと、納豆や大根のおろし汁、ネギなどをくわえた醤油だれがつけば、酵素効果はさらに満点だ。
夏は暑く、冬は雪に閉ざされる過酷な土地だからこそ、限られる食材を、知恵をしぼって工夫し、大切にいただく。そんなつつましい暮らしの中から生まれ、いまも脈々と伝えられる食。日本のふるさとには、理想的な酵素ごはんが健在だった。これからむかえる猛暑の夏、その知恵をわが家の献立に生かしてみてはいかがだろうか。
おいしく食べてからだにいい、
それが酵素ごはんです。
酵素をとる
生野菜、くだもの、お刺身などの生食や、味噌、納豆、ぬか漬けなどの発酵食品には酵素が豊富に含まれています。細かく刻んだりすりおろすことで酵素が活性化します。
酵素をたすける
代謝にかかわるビタミンB群、からだの不要物を排出する食物繊維、抗酸化作用のあるフィトケミカルなどが、酵素とともにからだのそうじをサポートしてくれます。
酵素をムダにしない
分解に時間のかかる油や糖質は酵素ごはんの大敵。えごま油(オメガ3系)やオリーブオイル(オメガ9系)、玄米や全粒粉など未精製の糖質に置きかえるだけで酵素のムダづかいを防げます。
取材協力
くれない苑
山形県村山市大久保甲4
☎0237‒54‒2420
そばがき(かいもち)をはじめ、地元の味が楽しめる