原料の野草採りからビンのラベル貼りにいたるまで、すべて手作業でつくられる『野草酵素』。世のなかがどれだけ機械生産に傾こうとも、人の手による 製法をかえることはない。
その理由は、「よい酵素をつくりたい」という近藤会長の強い思いがあるから。5月下旬、新緑の新潟県妙高市へ、ミヤトウ野草研究所を訪ねた。
野菜洗いに2時間、
野草選別は1日中
良質な野草の宝庫として知られる妙高高原のふもと、新潟県妙高市に『野草酵素』のふるさと、ミヤトウ野草研究所がある。
『野草酵素』の甘いふくよかな香りにあふれた敷地に入ると、妙高高原で栽培された小嶋さんのキュウリやパセリ、青森県の三橋さんご夫妻がつくったヤマイモ、そして沖縄の謝花さんと山代さんのパイナップルやレモンなど、近藤会長が現地におもむいて仕入れてきたみずみずしい野菜やくだものが次々と運びこまれていた。
「どれも、情熱を持った生産者の方たちが育てたものばかりです。そして酵素づくりに欠かせないのが、野草採り名人の石田さんをはじめ、たくさんの方が妙高高原を歩きまわって1本1本手で収穫した野草です」と近藤会長。『野草酵素』の手づくりは原料の段階からはじまっていた。
そうして集められた野草や野菜、くだものは、まず人の目と手を総動員して選りわけ、水洗いされる。その作業は野菜とくだもので1日2時間、野草では丸1日かかるという。機械で選別、洗浄すれば時間を短縮できるのでは? という疑問に野菜洗いの担当者が答えてくれた。
「天然の原料をつかうからこそ、泥や虫がつきものです。洗いながらそういう点をチェックできるので手洗いがいちばんなんですよ。春ならモンシロチョウの幼虫が隠れていないかキャベツの葉を1枚ずつ見たりと、季節ごとに洗い方もかえています」
お客さまの口に入るものだからていねいすぎて困ることはないんです、とつづけられた言葉が印象的だった。
洗った野菜とくだものは細かく刻まれて有用菌をくわえ、担当者が見つめるなか1時間じっくりと煮出した野草エキスが混ぜられる。そこからいよいよ酵素づくりのかなめ、発酵へ移る。
「木べらのまわし方だけならすぐに覚えられます。大切なのは、日ごと樽ごとにかわる発酵の状態を木べらの感触や香りで見極めて、混ぜ具合をかえることなんです。これができるようになるまで1年以上かかります」
まるで菌との会話である。機械では絶対に真似ができない。
妙高の木に囲まれ、酵素は育つ
ミヤトウ野草研究所では、妙高高原の間伐材を用いたペレットを専用ボイラーで燃やして得た熱で野草を煮出している。化石燃料にくらべて灰が出るため手間がかかり価格も安くはないが、「地球のためによいことを」と導入された。また、撹拌に欠かせない木べらは妙高市内の木工所で特注したもの。『野草酵素』は妙高の木に囲まれて育つのだ。
最高の酵素づくりに
近道はなかった
その後1年2ヵ月かけて熟成された酵素は、最終的に人の目で色を、舌で味を確認される。さらに、ビンにつめて出荷される際もラベル貼りから箱づめまで完全に手作業だ。なぜここまで人の手にこだわるのだろうか? そこには近藤会長の思いがあった。
「酵素づくりは菌が主役です。菌の微妙な変化をとらえるには人の手がもっとも適していて、機械ではおよびもつきません。手作業にこだわるのは、よいものをつくろうとした結果なんです。これはラベル貼りも野菜の洗い方も同様です。時代に逆行しているかもしれませんが、すべての工程で各自が五感を駆使し、自分の手で納得のいく仕事をするから最高の『野草酵素』ができあがるのです。だから、酵素づくりの主役は人とも言えますね」
いまから60年以上前に近藤会長がたったひとりではじめた『野草酵素』づくり。スタッフが158人に増えた現在も、当時と同じように人の手でつくられている。