わが心の野草だより 前編

編集長以下、幾人もの制作者が関わってきた「野草だより」。現在も編集部で活躍する面々が13年間の歴史を振り返ります。印象深い取材、苦労話、読者のみなさんへの思い、そして未来のこと――。

揺らぐ「食の安全」に
問題提起をした草創期

――ついに「野草だより」は今号で通巻100号をむかえました。長く制作に携わられたみなさん、まずは創刊当時のお話を聞かせください。

編集長 懐かしいなあ。たしか近所の印刷屋さんに頼んで刷ってもらったんだよね。たったの500部だったからいまみたいに大きな工場では扱ってもらえなくて。

カメラマンW このころから隔月の発行でしたっけ?

ライターY いえ。はじめは不定期刊行でしたね。

編集H Yくんは長いからね。わたしより少し後だったかな? たしか最初のギャラはお昼ご飯だけだったね。

ライターY あれには驚きましたよ。(一同笑)

ライターY まあ、まだ駆け出しのライターだったのでそれでもうれしかったんです。記事の内容も真面目でやりがいがありました。

編集H 「こんなにちゃんと取材するんだ」なんて驚いていたね。

――その後、第9号で1000部に到達。19号から、「『食の安全』は守られているか」という連載がはじまります。

ライターT 健康食品の通販の会報誌でここまで社会派の内容はめずらしいですね。BSE問題や産地偽装の問題に思いきって切りこんでいる。

ライターY 当時、食の安全が揺らぐようなニュースがつづいていたんです。ぼくらとしてもひとつもの申したいという気持ちでした。

第19号~27号まで9回にわたって連載された「『食の安全』は守られているか」。通販会社の会報誌の枠を破るジャーナリスティックな内容だった

編集長 なにか不祥事があると世間は特定の企業や生産者をヒステリックに責め立てるでしょう? でもそれって、「安さ」や「利便性」を追い求めてきた消費者の方にも責任があるんじゃないかと思ったんだよね。下地をつくったのは自分たちなんじゃないかと。

ライターY 自分がふだん食べてるものはどういうふうにつくられているのか。あらためて考えようというイメージでしたね。

編集長 最近は産地偽装なんかは聞かなくなったけど、たとえば加工食品のメーカーに勤めてる人が自分の子どもには自分の会社の食品を食べさせたくないとか、農家の人が自分たちで食べる野菜は別につくってるとか……。メーカーや農家さんにも事情があるのはわかるんだけど、そんなふうに大人が嘘ついていたら次の時代なんてないぞと思ったんだ。

編集H でもそうさせているのは我われ消費者なんだと。

編集長 そうそう。「国産品への妄信」も気になっていたな。お刺身は産地表示しなきゃいけないけどタタキは加工品だから表示しなくていいとか、食の安全はほんとうに守られているのかと。

ライターT 当時はまだ鶴見先生や藤田先生は登場していなかったけれど、それに近いメッセージを発信していたんですね。

※2004年の生鮮食品品質表示基準改正前。

必ず現場を取材する体験談に
嘘はひとつもない

――そうした記事にちからを入れるいっぽうで、創刊当初から一貫して「野草だより」の主軸は体験談であるというのも感じます。これまで594人ものお客さまに取材をしていますね。

編集長 594人はわれながらすごいよね。

ライターY 昔は電話のアポどりが大変だったんですよ。勧誘やセールスと間違われることも多くて。

ライターT いまは不思議とそういうことはない。大概みなさんこころよくお話してくださいます。

編集長 当時もいまも変わらず守っているのが、普段着でいくということだね。背広着てネクタイ締めていったらそれはセールスと同じ。ぼくらは訪問販売じゃない。あくまでお客さまと話すためにいくんだから普段着にカメラぶら下げていってます。

体験談の取材風景。初対面にも関わらず温かくむかえ入れていただき、まずはじっくり世間話

――なるほど。ところで体験談というと、「これってほんとうなの?」と聞かれることもしばしばかと思いますが……。

編集H 「野草だより」の体験談はすべてほんとうの話です。

ライターT 芸能人もモデルもつかわないし、嘘を書いたことは一度もない。体験談を書くときってすごく気持ちが入るんです。お話を聞きにいくと必ず人生の話になる。ぼくらとしても「『野草酵素』を飲んで感想いかがですか?」なんてことは二の次で、お孫さんが小学校にあがったとか、旦那さんはこんな人なんだとか、そういうお話こそがおもしろい。

ライターY どんな人にも絶対にその人にしかないエピソードがありますからね。

編集長 うん。誌面の都合や薬事法に考慮してやむなく削ってるくらいなんだ。最近はみなさんまとめて話してくださるけど、はじめのころはお互いに慣れていなかった。戦争のお話が2時間、『野草酵素』の話は最後にちょっとなんてザラ。でも、それがいいんです。要点だけ聞きたいなら電話で済むからね。直に会いにいくことに意味がある。「野草だより」には絶対に“一次情報”しか載せないというポリシーがあります。誌面を埋めるために、どこでも読める料理のレシピだとかストレッチ法だとか書くのは違うとぼくは思う。

編集H そこはずっと守っているよね。

編集長 可能な限り現場を取材するというのがジャーナリズムの基本。体験談はその最たるものなんだ。

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2024/02/23 10:21:10