野草だより
126号
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里山はわたしたちのくすり箱
──野草とともに暮らす、岡山の「薬草博士」を訪ねて──

現在のような「薬」がない時代、人びとの健康を支えていたのは薬効のある野草、つまり薬草であった。いまでは里山でも忘れ去られてしまった、薬草を上手にとり入れた暮らしの知恵。そんな古きよき日本人の暮らしを、現代に蘇らそうとしている「薬草博士」がいるという。取材班はさっそく岡山県美作(みまさか)市へ飛んだ。


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里山はわたしたちのくすり箱 ──野草とともに暮らす、岡山の「薬草博士」を訪ねて──(2)

この畦道にはたくさんの野草が。踏まずに歩くのがむずかしいほどだ



松原徹郎さん
NPO法人英田上山棚田団理事。大学卒業後、西日本一帯自然環境調査業に従事し植物調査をおこなう。専門は植物分類と植生管理。現在は野草の収穫体験ツアーなどもおこない、中山間地域の振興活動に励む



命を永らえるという意味で延命草ともよばれるヒキオコシ



きれいな青色が目を引くツユクサ。風邪をひいたときには熱冷ましになるそう



根の部分は葛根としても知られるクズ。花には肝機能を整える効果がある



この地域全体が野草の収穫場。草刈りの回数などをかえて有用な野草を増やすなど、集落に生える野草の生態系もデザインする



その名のとおり、切り傷などの血を止めてくれるチドメグサ。まさに自然の絆創膏だ



葉の部分がアレルギー改善に効果があるとされるノブドウ



葉はそのまま食べても効果が期待できる。苦いものや甘さを感じさせるもの、そのままサラダにつかえそうなものなど、味もさまざま



クワなら7〜9月と、薬効成分がもっとも多くなる旬の時期に収穫。その日のうちに天日干しにする

荒れ放題だった棚田も現在までに100枚近くが再生。すこしずつ、在りし日の姿をとり戻している



里山から野草が消える?
貴重な資源を守るために

「このクワの葉にはDNJという成分が含まれていて、食後の血糖値の急上昇を抑えてくれます」「あそこに生えているノブドウはアレルギーの改善によく効きます。軽いものなら、葉を煮出したお茶を3ヵ月くらい飲むと花粉症が治りますよ」

美しい棚田が目の前に広がる里山の道で、そこかしこに生える野草を見つけては、種類や効能を説明してくれる。

約150名の人びとが暮らす岡山県美作市の上山地区。土地の人たちから「薬草博士」とよばれる松原徹郎さん(46歳)は、奥さまの久美さんと3人の子どもたちを連れて、2013年に大阪から上山へと移住した。

古くは、日本最大級ともいわれる棚田群が見られたが、高度経済成長期以降は耕作放棄によって荒廃。2007年から、大阪から来た若者たちによって棚田を再生する活動がおこなわれている。松原さんもそのメンバーであるが、「ぼくの場合は野草がメイン。もちろん棚田も大切ですが」と笑う。

「耕作放棄されて竹藪や笹に覆われた棚田を再生させることで、日あたりのよい畦ができる。そうした畦にはたくさんの種類の野草が生えるんです」

20代のころから40歳になるまで環境調査の仕事に就き、1年の約半分を里山で過ごす日々を送った松原さん。

「全国各地で調査をおこなううち、数年前には自生していた貴重な野草が、里山の荒廃とともに消えてしまう現実を目のあたりにしました。薬がない時代からつかわれていた野草は、本来なら貴重な自然の資源ですからね。薬草としての価値を多くの人や次の世代に伝えていくためにも、まずは里山を元の姿に戻し、自分たちで野草の活用をはじめようと考えたんです」

それが、松原さんが移住を決断した大きな理由だ。



上山は薬草の供給地

かつてこの土地の人びとは野草を薬に食用にと重宝してきた。80歳以上のお年寄りのなかには、「子どものころには小遣い稼ぎでセンブリやミコシグサを集めた」と話す人も。じつは、大正時代の初期までは、「富山の薬売り」で有名な富山の家庭薬行商人が、しばしば原料の調達に来るほどの薬草の宝庫であったのだ。



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里山はわたしたちのくすり箱 ──野草とともに暮らす、岡山の「薬草博士」を訪ねて──(3)

大正15年生まれの小林純男さん。健康長寿の秘訣を聞くと、「季節のものを食べて、毎日の草刈りや畑仕事をちょっとずつやること」と教えてくれた



ホワイトリカーに野草を漬けこんだ自前の野草酒も美味。クズジュースは二日酔いになった仲間たちにも重宝されている



天ぷらや卵焼きなど、毎日の食卓に野草をとり入れている



オオバコとツユクサの味噌汁。仕上げにミツバをパラリ



里山の栄養ゆたかな土で育つ野草には、わたしたちの生命活動に欠かせない必須ミネラルも豊富。久美さんの野草料理のなかでも「ヨモギの天ぷらが好き」と教えてくれたのは、次女のりんちゃん



中央はベニバナ。紫の花から時計まわりに、クズ、ノブドウ、ビワ、マルバハギ、ドクダミ、ヨモギ、クワ。ビワの葉を温灸につかうと腰痛などの痛みを抑える効果がある。ほかにも、ベニバナなら生理痛の改善や血液の浄化が期待できるなど、それぞれの草花が薬草としての力を持つ

病気知らずのからだをつくる
220種類もの薬草たち

日照時間や日のあたり方が場所によってかわるため、土の成分が微妙に異なる。そんな上山はまさに野草の宝庫だ。

「現在までにこの集落で約670種の野草が見つかっていて、そのうち約220種が薬効成分のある薬草です。このあたりでも大正時代くらいまではあたり前のように野草が薬がわりにつかわれていたようですが、その時代のことを知る方もいまでは数すくなくなっていますね」

そう話す松原さんが「スミさん」とよぶ、御年91歳の小林純男さんを紹介してもらった。

「野草のことは子どものころ母親にいろいろと教わったよ。リンドウやらセンブリ、ミコシグサ(ゲンノショウコ)。胃が悪くなったら飲めとよく言われたもんさ。あれは消化にええんやったかな。このあたりではほとんど見られなくなってしもうたな」

それでもこの里山には、薬草としてつかえるものがたくさん残されている。

「野草にも旬があり、もっとも薬効成分が多くなる時期を見極めて摘むことも大切なんですよ」

そう話す松原さんについてすこし集落を歩くだけでも、クワやノブドウのほか、クズやヒキオコシにスミレやハコベ……秋の野草に次々と出会った。

「ヒキオコシは胃痛や二日酔いによく効きます。イノコヅチは飲めば神経痛が30分で治まりますし、ハコベには消炎作用があって、肌や消化器官の炎症を抑えてくれるんですよ」(松原さん)

これらはそのまま食べてもいいが、乾燥させ煮出してお茶にするのが松原さんのおすすめ。松原家ではほかにも、ふだんの料理をはじめ、日々の暮らしに野草がとり入れられている。

「いまの暮らしをはじめて、わたしたちもそうですが、子どもたちが風邪ひとつひかなくなりました。からだの免疫力を高めたり慢性疾患を予防したりと、野草にはたくさんの効能があります。そんなにいいものがこれだけ生えているんですから、つかわないのはもったいないですよね(笑)」とは、奥さまの久美さん。

野草の力で病気にならないからだをつくる――そんな生活を普及させ、将来的にはこの上山で、野草をつかった健康相談所を開設したい。それが松原夫妻の夢。

里山こそがくすり箱。松原夫妻の夢が叶うころには、野草をとり巻く状況も大きく様がわりしているかもしれない。


医者にかかる前に腸に聞け! 第19回

「究極の便」を出す者は100歳になっても老い知らず

健康長寿の人たちの
ある共通点とは?

日本人は戦前400gの便が出ていたが、現代は食の欧米化により半分に減少。いっぽう糞便量が多いケニア人は、がん患者がすくない

出典:数から科学を読む研究会『あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで』講談社(2015)より作成



食事や生活習慣を見直したり、健康食品をうまく活用しながら「究極の便」を目指そう

みなさんはご自身が何歳まで元気に過ごせると思いますか? 日本人の平均寿命は男女ともに80代ですが、100歳を超えても元気に活躍する方もいます。双子姉妹のきんさんぎんさんや、聖路加国際病院の日野原先生も、亡くなる直前まで精力的に活動していらっしゃいました。

といっても、彼らのからだが特別なわけではありません。長寿の秘密、それは「腸の若さ」です。きんさんぎんさんは味噌汁や野菜を毎食とり、日野原先生も糖質制限や軽い運動など腸がよろこぶ生活を送っていたのです。

現在活躍中で、見事な腸をお持ちなのが冒険家・三浦雄一郎さん(85歳)。彼は80歳という世界最高齢でエベレスト登頂に成功し、90歳までに4度目の登頂も視野に入れているという驚異のからだの持ち主です。

三浦さんは65歳のときに長年の不摂生が原因で余命3年と宣告されましたが、生活習慣をあらためたことでパワフルな腸を手に入れます。なんと登山中、時差や疲労があるにもかかわらず、毎日「大量の便」を出していたそうです。

便の量と健康にはいったいどんな関係があるのか。くわしくお話ししていきましょう。



病気の早期発見も!
便で健康状態をチェック

わたしは世界の人びとの便を収集し、これまでに10万個以上のサンプルを研究しました。その結果、ケニアやメキシコなど食物繊維たっぷりの食生活でドッサリ出している国ほど、がんなどの病気がすくなく、表情も活気に満ちあふれています。

便はただの食べかすだけではなく、その半分は腸内細菌の死骸や古くなった腸粘膜。つまり、量が多いほど腸の新陳代謝が活発で、免疫力も高い証。1972年に「腸と病気の関係」を明らかにしたイギリスのバーキット博士も、「便の量が多い国は病院が小さい」という言葉を残しています。

あなたは今日どんな便を出しましたか? わたしが唱える「究極の便」は、バナナ2本分の量。そして黄土色でクサくなく、ゆっくりと水に沈めばパーフェクト。硬さやニオイ、色も重要で、もし硬かったりゆるかったり、色が黒っぽい場合はからだの不調を知らせるサインです。右の表を参考に、生活習慣を見直していきましょう。

便を見れば健康状態や病気のリスクまで一目瞭然。医療でも「予防医学のカギ」として注目され、便のデータを収集する研究者が増えています。「汚い」とすぐに流してしまわずに、腸からの大切な便りをしっかり受けとりましょう。

藤田先生にとって便の観察は「腸との交換日記」だそう。観察をつづければ、自分の腸がどんな食事や生活習慣が好きなのかわかると言います。わたしたちもさっそく今日から、腸との交換日記をはじめましょう!


病気知らず冷え知らず 第12回

「頭寒足熱」でからだの毒素が逃げていく

日々蓄積する毒素が
不調や病気の原因に

寒さが身にしみる季節になってきたが、体調をくずしていないだろうか。毎年季節のかわりめになると熱を出したり、だるさや頭痛などの不調を訴える人が多い。これは、次の季節に向けて老廃物や疲労物質など体内に蓄積した「毒素(※)」を出そうとする、からだの本能だ。

通常、体内に発生した毒素は血液を通して便や尿、汗として体外に排出されるが、からだが冷えているとその機能がうまくはたらかない。すると、いき場を失った毒素は再び血中に戻ってしまう。そして全身をめぐって内臓や筋肉、関節などに悪影響をおよぼし、不調や病気の原因になってしまうのだ。

日ごろから温かいからだを保てば毒素はきちんと排出されるが、ただやみくもに温めるよりも、もっと効果的な方法がある。

※排気ガスやタバコの煙など外から体内にとりこまれる有害物質も含む



現代人は6℃も低い!?
下半身の冷えは深刻

まずは冷えを自覚していない人も、自分の足を触ってみてほしい。手よりも冷たく感じないだろうか? じつはわたしたちのからだは心臓を中心に37℃前後の体温を保っているが、足先に向かってどんどん低くなる。とくに運動不足などで筋力が弱っている現代人は、上半身と下半身に6℃近くも差があるといわれている。

下半身が冷えていると血流が滞り、毒素を排出する力も弱くなる。そこで「頭寒足熱」を実践し、体温の差をなくすことが大切なのだ。ズボン下や保温性の高い靴下を履いたり、座るときは膝かけをつかうなど、上半身よりも下半身を重点的に温めよう。

とくに毒素が活発に排出されるのは就寝時。湯たんぽやレッグウォーマーなどで足を温め、腕は布団から出し、「半身浴」の状態で眠るとよい。体温のバランスを整えて、毒素も病気も逃げていく「ぽかぽかのからだ」をつくろう。


野草ずかん 第6回

カキの葉
柿の葉



カキノキ科カキ属
花期は6月ごろで、葉腋に黄緑色の小花をつける
葉は楕円形で先がとがり、裏に毛がある



中国原産で、日本で品種改良された落葉高木。樹高は3~9mほどになり、秋には球形または卵形の多肉の果実をつける。

江戸時代の語源辞書『日本釈名』に「あかき也。其の実も葉もあかき故也」とあり、赤木を略してカキになったという説がある。

カキの葉には豊富なポリフェノールが含まれているため抗菌作用がある。奈良や石川などの郷土料理「柿の葉寿司」はこれを活用したもの。

乾燥させたカキの葉を煎じて飲むと高血圧の予防によいとされる。

カキの葉が含まれる商品

ゲルニン129


妙高の野草採り名人
石田さんのひと言

カキはへたも生薬になるんだよね。若葉は天ぷらにして食べると渋みがなくておいしいんだよ。