野草だより
125号
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湯治のすすめ ──古くから伝わる民間療法、その効用に迫る──

日本で古くから親しまれてきた湯治。現代のような先進医療がない時代には、温泉でからだを温めることが治療法のひとつとして広く利用されていた。温泉でゆっくり過ごすことで、冷えや不眠、からだの痛みなどの不調を癒す方法である。時代とともに衰退していた湯治文化だが、ここへきてまた見直されはじめている。

その力を探るため、日本一の源泉数と湯量を誇る湯の里・別府温泉の鉄輪(かんなわ)へ。そこで古きよき湯治場を守る人びと、そこに集う人びとに出会った。


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湯治のすすめ ──古くから伝わる民間療法、その効用に迫る──(2)

地域の人に愛されている共同温泉「地獄原温泉」。塩分を含む鉄輪温泉の湯はよくからだを温めるうえ、しっとりと肌をうるおすといわれる

一遍上人像をまちのいたる所で見かける



湯治宿「双葉荘」のおかみ、伊東アサ子さん。温泉のおかげか肌もつややかだ



医学博士 前田豊樹氏
九州大学病院別府病院内科准教授。専門は内科、神経内科、加齢医学、温泉医学。大阪大学医学部附属病院、九州大学病院勤務などを経て2011年より現職。地の利を生かし、温泉治療の医療への応用拡大を目指す



双葉荘は台所つきの部屋を含めて大小20室。なつかしい風情の部屋でわが家のようにくつろぎ、のんびり湯治をすることができる



鉄輪には、まち中に無料の足蒸しの湯があり、誰でも気軽に利用できる



鉄輪には、湯治で足が治った人たちが必要なくなった松葉杖を捨てていく場所があった



取材協力:双葉荘
大分県別府市鉄輪東6組
電話:0977-66-1590

温泉には、西洋医療にない
自然の治癒力があった

まちのあちらこちらから白い湯けむりが盛大に立ちのぼる別府。この温泉郷には個性さまざまな8湯がある。そのうちの1湯、鉄輪温泉は鎌倉時代に時宗の開祖、一遍上人が開いたとされる温泉地。以来、名高い湯治場として知られ、いまも昔ながらの風情の湯治宿が多く残る。

そもそも湯治とは古来、皇族や貴族など身分の高い人びとや戦国時代の武士が病や傷を癒したもの。江戸時代には庶民にも広まり、農民や町人が湯治願いを出して旅立った。現代では温泉というと1~2泊程度の観光目的がほとんどだが、本来の湯治は3週間ほど滞在するのが基本。湯治宿はいまもほとんどが自炊で、洗濯なども自分でおこなう。いわば暮らしながら、じっくりと病の治癒や健康増進を目指すものだ。

鉄輪温泉の老舗湯治宿「双葉荘」は昭和15年創業。二代目おかみ、伊東アサ子さん(71歳)はかつての鉄輪温泉をこう語る。

「鉄輪がいちばんにぎわったのは戦後から昭和40年代。農閑期に骨休めに来る農家の人や筑豊から自家用車で乗りつける炭鉱主、老人クラブの方々……。団体さんには6畳間に5人も寝てもらう繁盛ぶりのときもありました」

このように愛されてきた湯治の効能について、九州大学病院別府病院内科で温泉医学を研究する前田豊樹准教授に聞いた。

「温泉には温熱効果のほかに、自律神経を整えることでバランスがくずれた生体を理想の状態へもどす力があります。たとえば低血圧と高血圧両方に効く薬はありませんが、温泉は生体調整作用でどちらも治すのです。長く逗留して存分に温泉の力を得る湯治は、より有効でしょう」

別府病院には以前、温泉病床が存在した。前田先生はそこで温泉の驚くべき力を見たという。

「激しい腰痛と足の冷えに悩む患者さんが足湯で痛みも冷えもとれたのです。この薬いらずの厳然たる“治った感”はすごい。わたしも温泉医学として研究を進めています」


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湯治のすすめ──古くから伝わる民間療法、その効用に迫る──(3)

食材によって蒸し時間が異なる、とアドバイスをするおかみ。ベテラン客が初心者に教えることも多い。このふれあいが湯治ならではの魅力だ

友人同士で湯治に来た、宮田みつさん(77歳・右)と伊藤幸子さん(80歳、左)。眠れないほどの冷えも解消したそう



備えつけのかごに食材を入れて地獄蒸しの釜へ。湯治客が好んで調理するのは野菜類の上に豚肉などを乗せて蒸す栄養バランスもいい一品



温泉は浸かるだけでなく煮炊きにもつかわれる



福岡から来た田端高夫さんと節子さん夫婦。節子さんの足腰の痛みも温泉でやわらぐとか

湯の力と人情、ふれあい
それが心身を癒す湯治の魅力

さて、話の舞台を鉄輪にもどそう。双葉荘は大小20室の自炊の宿。病気や不調を湯治で治したいと願う人、のんびりと休養を楽しむ人など、客層はさまざまだ。泉質はナトリウム・塩化物泉。おもに神経痛やリウマチ、切り傷などに効くとされるが、さまざまな症状がラクになると評判だ。

実際、毎年同じ時期に通ううちに湯治友達ができたり、つき合いが長くなるお客さんも多い、とおかみさんは言う。

「思い出深いお客さんの中には、こんな方も。100歳のお祝いはなにがいいか家族に聞かれ、『一晩でいいから双葉荘に泊まりたい』と言って来てくれました。しばらくお見えになっていなかっただけにとてもうれしかったですね」

おかみさんにそんな話を聞くうち、夕方に。炊事場にはお客さんたちが集まってきた。源泉タンクから引いた100℃以上の蒸気で食品を蒸しあげる「地獄蒸し」で、夕食のしたくをするためだ。ご飯や魚介、肉、卵、野菜など、どんな食材も手軽に、甘みやうまみを増してふっくら蒸しあがる。脂が適度に落ちて健康的なうえ、食材から温泉成分もたっぷりとりこめる。温泉療法のひとつに、湯を飲んで治す“飲泉”があるが、それと同じ考え方だ。

夕食準備でにぎわう釜の前にやってきた田端高夫さん(88歳)・節子さん(87歳)夫妻は30数年来の常連。節子さんは湯治をすると帯状疱疹や足腰の痛みがやわらぐという。高夫さんは、「気管支に持病があり、1ヵ月前に喀血しました。でもここで湯治をすると湯気のおかげか気管がラクになります。ゆっくりリラックスして湯治を楽しむのも心身にいいのでしょうね」

湯治客のみなさんが口をそろえて語ってくれたのは、実際の効能効果にくわえて、この「リラックス効果」や「楽しさ」。現代生活では失われつつある、ゆったりした時間や人とのふれあい。「また会えましたね。お元気でなにより」という再会のよろこび。からだの癒しと心の癒し、その両方があるからこそ、湯治文化は再び見直されているのだろう。



昔ながらの風情を大切に、
新しい鉄輪の魅力を発信中

なつかしい湯治場の雰囲気を生かしながら、鉄輪をさらに魅力的なまちにしようととり組む人たちがいる。そのひとりが橋本栄子さん。老舗の旅館「サカエ屋」を引き継ぎ、重厚な造りはそのままに洗練された和モダンの宿「柳屋」へと進化させたおかみだ。

さらに鉄輪には明治期築の旅館「冨士屋」をクラフトショップやカフェ、ギャラリー&ホールとしてよみがえらせた「冨士屋Gallery一也百(はなやもも)」も。まち歩きの楽しみが高まり、最近は若い湯治客の姿も増えたという。


「柳屋」のおかみ橋本栄子さん


取材協力:柳屋
大分県別府市鉄輪井田2組
電話:0977-66-4414


なるほどナットク引き算健康法

百害あって一利なし。「アクリルアミド」とは?

炭水化物の多い食材を120℃以上の高温で長時間揚げる・焼くと発生する物質、「アクリルアミド」。神経障害を引き起こすことが確認されており、一部では発がん性も指摘される。含有量の多い食品には注意が必要だ。

とり過ぎると健康リスクも。
今日からさっそく引き算を!

【今回のまとめ】

120℃以下の調理法
(蒸す・ゆでる)なら安全。
揚げる・焼く場合は短時間で!

あなたは大丈夫? アクリルアミドの足し算チェックシート

  • □ファストフードが好きだ
  • □小腹がすくとポテトスナックに手が出る
  • □朝は洋食。トーストが欠かせない
  • □揚げ物が好きでよく食べる
  • □蒸し物やゆでた料理は物足りない

2つ以上あてはまる人は、過剰な足し算の可能性大!


野草のじかん 第30回

木天蓼[マタタビ]



マタタビ科マタタビ属
生薬名:モクテンリョウ(木天蓼)
またはテンモクツル(天木蔓)



日本各地や朝鮮半島、中国など東アジアの山地に広く自生する落葉のつる性植物。猫に与えると陶酔状態になることで知られる。

名の由来は、疲れた旅人が実を食べたところ元気が出て「また旅をした」という説、アイヌ語の「マタタンプ」がなまったという説などがある。

福井県の鳥浜貝塚や青森県の亀ヶ岡遺跡の地層からマタタビの種子が出土しており、縄文時代から食用していたと考えられている。

マタタビアブラムシがついてできる虫こぶの実や、つるの部分が生薬になる。神経痛、冷え症、疲労回復などに効果があるとされ、薬用酒にも用いられる。


妙高の野草採り名人
石田さんのひと言

「妙高は生育に適している地域なのかよく見るね。葉が白くなるから、すぐにわかるんだ。マタタビの実は滋養強壮にもいいんだよ」


医者にかかる前に腸に聞け! 第10回

肥満や病気を左右するのは「ヤセ菌」と「おデブ菌」だった

近い将来、
便で病気を治す時代に?

脂質や糖質を多くとるイタリア人の腸はおデブ菌が優勢。いっぽうヤセ菌が多いアフリカ圏の人は、便秘や腸炎になる人がほとんどいない
出典:「実験医学」Vol.32,No.5,2014より作成



世の中には少食なのに太る人と、たくさん食べてもスリムな人がいます。同じ人間なのになにが違うのか、みなさんも疑問に思ったことはありませんか?

じつは最近、その答えが明らかになってきました。それは、腸内にいる「ヤセ菌」と「おデブ菌」のバランスの違い。これらは日和見菌に分類される菌で、誰もが腸の中に持っています。

「おデブ菌」はその名のとおり、食べたものを脂肪として溜めこむ菌。少食なのに太りやすい人の腸はおデブ菌が多いのです。

いっぽう「ヤセ菌」は脂肪のとりこみを抑え、太りにくい体質をつくります。さらに胃や腸、肝臓などを活発にする「短鎖脂肪酸」を生産し、さまざまな病気を予防してくれるのです。ならば、ぜひともヤセ菌を増やしたい、と思う方が多いでしょう。

近年そのはたらきを利用し、ヤセ菌が多い人の便を患者の腸に移植するという驚きの治療法が話題です。潰瘍性大腸炎の改善が確認されており、動脈硬化や認知症などの予防も期待されています。

しかし、これはまだ研究段階の治療法。誰でも手軽にヤセ菌を増やせる方法をお教えしますので、ご安心ください。



ヤセ菌がよろこぶ
3つの栄養素をとろう

「ヤセ菌」は善玉菌が優勢のときに活性化する日和見菌です。ということは、善玉菌を増やす生活を送ればヤセ菌もおのずと増えるのです。読者のみなさんは、すでに食物繊維や酵素を日常的にとり、日々努力されているでしょう。ぜひともその習慣をつづけてください。

さらに食物繊維は消化されずに腸まで届き、ヤセ菌のエサになります。また、オリゴ糖にも同様の効果があり、タマネギ、ゴボウ、バナナ、リンゴといった身近な食材に多く含まれます。食物繊維、酵素が豊富な発酵食品、オリゴ糖。この3つの栄養素を積極的にとれば、ヤセ菌が多い腸になるでしょう。

反対に、おデブ菌は高カロリー・低食物繊維の食事が大好物。じっさい、ピザやパスタが主食のイタリア人はおデブ菌が多く、野菜や豆をよく食べるアフリカ圏の人はヤセ菌が多いという興味深い研究結果があります。おデブ菌が多いと糖尿病や高血圧になりやすいだけでなく、がん細胞を増殖させるともいわれています。

大切なのは「どれだけ食べるか」ではなく、「なにを食べるか」。さっそく今日からおデブ菌を減らし、ヤセ菌を増やす食生活をはじめましょう。そうすれば、スリムで病気知らずのからだが手に入るのです。

「ダイエットのため」と食事制限をすると、一時的に体重は減ります。しかし、腸のはたらきが衰えてむしろおデブ菌が増えてしまうそう。ヤセ菌がよろこぶ食事をとること、それが太りにくいからだをつくる秘訣と心得ましょう。


病気知らず冷え知らず 第5回

油断できない初夏の冷え、1日1回の冷えとりがカギ

暖かいのは昼間だけ
気温差や気圧で低体温に

花粉の季節も過ぎ、さわやかな初夏の到来。過ごしやすい季節と思いがちだが、風邪をひいたりと体調をくずしている方もいるのではないだろうか? それもそのはず。5月は夏風邪が流行しはじめる時季である。

その原因はからだの冷え。「暖かいのに冷えるの?」と思われるかもしれないが、季節のかわりめで朝晩はまだ気温が低い。昼間は暖かいぶん、からだが油断して想像以上に冷えやすいのだ。

さらに気をつけたいのが梅雨入り後。気圧の変化によって自律神経が乱れ、汗をかきにくくなってしまう。するとからだに余分な水分がどんどん溜まり、体温が下がっていく。やがて血行不良や胃腸の機能障害などを引き起こし、さまざまな不調や病気の原因に。



発汗で冷えを解消
熱中症の予防にも

いまの時季は冷えを自覚しにくく、悪化しやすい。だからこそ、毎日体温を上げる習慣をつくることが重要だ。運動でからだを動かすのもいいが、もっと手軽な方法がある。

それは、湯船に浸かること。温熱で血行がよくなり、発汗がうながされる。体内の余分な水分が排出されると、体温が上がりやすくなるのだ。ただし、長時間の入浴はからだに負担がかかるので要注意。ぬるめのお湯に20分ほど浸かり、額にうっすら汗をかくくらいでじゅうぶん。入浴後は水分補給も忘れずに。

初夏から夏にかけては、湯上がりの汗を敬遠してついシャワーですませがち。しかし、これでは冷えが蓄積されてしまう。1日1回汗をかき、冷えをその日のうちに解消するよう心がけたい。

じつは、いま冷えをとり除くことは熱中症の予防にもなる。からだが温かいと体温調節機能がスムーズにはたらき、厳しい夏の暑さにも順応できるようになるのだ。

暖かくなってきたからこそ、毎日の冷え対策が大切。翌日に冷えを持ち越さずに体温を高く保ち、元気に夏をむかえよう。